両手でも抱えきれぬ愛で贖えるものなら
呼び止められ、

「何でしょうか…?」

恐る恐る振り返る。

「アンタ、プロのピアニストなの?」

「いえ、音大は出ていますが、他にも仕事掛け持ちしてますから」

「まぁ、そうだろうね。音大卒なら、この程度弾ける人はゴロゴロ居るし」

そんなこと、言われなくても自分がいちばん判っているのに、何なのだろう?本当に…。

「そうですね…では、失礼します」

「おいおい、まだ話は終わってないんだけど」

「ですから、何でしょう?」

「俺のこと、前から気づいてたろ?」
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