【異世界恋愛】【完結】猫族の底辺調香師ですが 極悪竜王子に拾われました。
 朝鳥が鳴く前には起床し、家事の邪魔にならないよう、栗色の長い髪を後ろで一つに結ぶ。それから家中の掃除をして、朝食のスープを作る。毎日の日課だ。
 そろそろ野菜のスープにも飽きてきたので本当は魚を焼きたいが服や髪に匂いがついてしまってはこの後の仕事に支障が出てしまう。ここは我慢だとニーナは鍋をかき混ぜた。

「――魚のことを考えたら余計お腹が空いてきたな……もしかして魚の香りとか案外使えたりして……」
 すぐに香水のことを考えてしまうのは最早職業病だ。そんないつも通りの朝に、いつも通りの甲高い怒号が響く。
「ちょっとニーナ! 朝食はまだなの!? 私を飢えさせる気!?」

 一食くらい抜いても飢え死にしないのはもう何年も家計の事情で一日一食を強いられている自分が身をもって実証済みだと口にするのを堪えて、皿にスープとパンをリビングで苛立つ継母のもとへ運んだ。

 「申し訳ありません。お持ちしました、お継母様」
 継母は古い家に似つかない豪華なドレスを身に纏い、宙に浮かせた化粧道具を指先で操って唇に紅を塗る。
 ニーナは思わず溜息をつきそうになった。
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