猫族の底辺調香師ですが 極悪竜王子に拾われました。
 そして、ふわりとニーナの頭にレースを被せる。それはドレスと同じく繊細な刺繍が施されていて、よく見ると小さな蒼と緑の宝石が散りばめられている。

「俺の鱗から作った糸で作らせたんだ。ニーナ、どうかそのドレスと共に受け取ってほしい」

 ロルフはそう願うようにニーナの手の甲に口付けた。視界が滲む。声が震えて、心臓が破裂しそうになるほど高鳴っていく。

「……っ……私で……宜しいのですか……」
「君がいいんだ。俺の隣にいてくれるのはニーナだけでいい」
「私には香水しかありません……他にはなにも持っていないんです」
「君の香水ほど素晴らしいものはない。他に欲しいものがあればなんでも用意するよ。そうだ。一緒に見つけていけばいい」

 真っ直ぐ、蒼い瞳に見つめられ、熱を注がれる。ロルフの唇が紡ぐのはあまりに都合がよくて優しすぎる言葉だ。

「ニーナ。俺と結婚してくれ。君と一緒に過ごす未来がほしい。必ず幸せにする」

 その言葉を聞いた途端、涙が溢れた。今度は嬉しくて、切なくて胸を締め付けるような涙だ。
 ――信じていいの? 甘えて、甘えられて、頼って、頼られて。この人の未来に私がいてもいいの?

「……答えをきかせてくれるか?」

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