没落令嬢のおかしな運命~餌付けしたら溺愛されるなんて聞いてません!~


「責めているわけじゃないからそんな顔しないで。寧ろあの時ラナを助けてくれてありがとう。あなたのお陰でジャクリーン様に私のお菓子の味をしっかり伝えることができたわ」
「少しでもお嬢様のお役に立ったのなら僕は嬉しいです」

 ネル君がホッとした様子で顔を上げたところで、話題を変えるべく私は気になっていることを質問した。

「ところでこの間は急にいなくなってとっても心配したのよ? あの後は大丈夫だったの?」
「あの時はこれ以上お嬢様のご厚意に甘える訳にもいかないと思って消えたの。その節は助けてくれてありがとうございました。お嬢様のクッキーは今まで食べたものの中でも一番で、未だに僕はあの味が忘れられません」


 どうやら私はネル君の胃袋をがっちりと掴んでしまったらしい。頬を赤らめながら訥々と話すネル君の瞳は徐々に熱っぽくなっていく。
 その様子を見て私の頬はいつの間にか緩んでしまっていた。
 彼の照れる姿はとてつもない破壊力で、その愛らしさをもっと間近で眺めたいという衝動に駆られる。

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