愛した人は剣奴だったから
最近のアデリアは、河の中州にある貧民の為の病院に向かい看護を手伝っていた。包帯も巻く。患者の寝具の洗濯もしている。そんなアデリアのことを敬遠する貴族もいるが、活動に賛同してくれる支援者もいる。
遺棄児童を支援する施設を属州の山岳部に作った総督がいる。
総督の手助けをしてくれないか、という話がテラスを通して舞い込んだ。彼は、貴族の婦人に女子専用の修道院の管理をしてもらいたいと依頼してきたのである。
アデリアは働く為に、オスベルの北側にある属州の街へと向かおうとを決心していた。
いよいよ、明日、この街を出ていくのだ。
(さてと、これで旅支度は済んだわよね)
やっと荷物もまとまった。
(そうだわ、あれも持っていかなくちゃ。辺鄙な属州には、こんなふうにいい香りの化粧用の香油がないかもしれないもの)
侍女に頼る事なく、自分自身で荷物を詰め込み、あれこれと点検していたのである。庭の篝火が夜風に揺れている。中庭で夕涼みをしている赤子が大きな声で泣いている。
乳母が赤ん坊をあやすために子守歌を歌っていた。シルミスが最初に生んだ子は女の子だった。そして、先月、生まれた子供は待望の男の子。
現在、シルミスは夫のアンスと仲良く暮らしている。
『アデリア、いつまでもここにいてもいいのよ』
出産してからのシルミスは以前とは何かが違っていた。 素朴な暖かさというものを感じる。シルミスは、良き母となり、もう仲間とバカ騒ぎを好まなくなっている。
アンスが良妻賢母を求めている事も関係しているのかもしれない。
ちなみに、ユカラは、お酒の飲み過ぎか原因で河に落ちて亡くなっている。自殺したのではないかという者もいる。ユカラの年老いた夫が愛人を作り、ユカラと離縁したというのだ。それで、ユカラは自暴自棄になっていたのかもしれない。
(人生に苦労はつくものだわ。でも、どう生きるかは自分次第だわ)
侍女の手を借りる事無く、自分の手で荷造りを終えたアデリアの心に寂しさが漂っていた。ここから離れる事は寂しかった。
(テラスもついてきてくれたらいいのにな……)
しかし、テラスはこの家に残らなければならない。本人がここにいたいと告げた。
(あーあ、明日からは一人ぼっちになるのね。でも、しっかりしなくちゃ!)
テラスにはテラスの人生がある。
寝椅子に横たわると少し疲れたように目を閉じていた。
(でも、テラスは、あたしと離れて寂しくないのかしら……)
先刻、テラスがやってきて耳元で囁いたのだ。声音には哀愁の様なものが滲んでいた。
『アデリア様! 今夜でお別れですわね』
テラスはとても柔らかな表情をしていた。丸く包み込むような優しい眼差しを向けられると、アデリアは泣きだしそうになる。
遺棄児童を支援する施設を属州の山岳部に作った総督がいる。
総督の手助けをしてくれないか、という話がテラスを通して舞い込んだ。彼は、貴族の婦人に女子専用の修道院の管理をしてもらいたいと依頼してきたのである。
アデリアは働く為に、オスベルの北側にある属州の街へと向かおうとを決心していた。
いよいよ、明日、この街を出ていくのだ。
(さてと、これで旅支度は済んだわよね)
やっと荷物もまとまった。
(そうだわ、あれも持っていかなくちゃ。辺鄙な属州には、こんなふうにいい香りの化粧用の香油がないかもしれないもの)
侍女に頼る事なく、自分自身で荷物を詰め込み、あれこれと点検していたのである。庭の篝火が夜風に揺れている。中庭で夕涼みをしている赤子が大きな声で泣いている。
乳母が赤ん坊をあやすために子守歌を歌っていた。シルミスが最初に生んだ子は女の子だった。そして、先月、生まれた子供は待望の男の子。
現在、シルミスは夫のアンスと仲良く暮らしている。
『アデリア、いつまでもここにいてもいいのよ』
出産してからのシルミスは以前とは何かが違っていた。 素朴な暖かさというものを感じる。シルミスは、良き母となり、もう仲間とバカ騒ぎを好まなくなっている。
アンスが良妻賢母を求めている事も関係しているのかもしれない。
ちなみに、ユカラは、お酒の飲み過ぎか原因で河に落ちて亡くなっている。自殺したのではないかという者もいる。ユカラの年老いた夫が愛人を作り、ユカラと離縁したというのだ。それで、ユカラは自暴自棄になっていたのかもしれない。
(人生に苦労はつくものだわ。でも、どう生きるかは自分次第だわ)
侍女の手を借りる事無く、自分の手で荷造りを終えたアデリアの心に寂しさが漂っていた。ここから離れる事は寂しかった。
(テラスもついてきてくれたらいいのにな……)
しかし、テラスはこの家に残らなければならない。本人がここにいたいと告げた。
(あーあ、明日からは一人ぼっちになるのね。でも、しっかりしなくちゃ!)
テラスにはテラスの人生がある。
寝椅子に横たわると少し疲れたように目を閉じていた。
(でも、テラスは、あたしと離れて寂しくないのかしら……)
先刻、テラスがやってきて耳元で囁いたのだ。声音には哀愁の様なものが滲んでいた。
『アデリア様! 今夜でお別れですわね』
テラスはとても柔らかな表情をしていた。丸く包み込むような優しい眼差しを向けられると、アデリアは泣きだしそうになる。