愛した人は剣奴だったから
『ゴビの兵士達の残虐な振る舞いを忘れたことなどありませんわ』
この瞬間、少しばかりレンシーの中で風向きが変わった。テラスはゴビを敵視しているのだ。
ユーラカスは、十二年前にゴビによって崩壊している。
ザトラ三国の悲劇は、オスベルの吟遊詩人の恰好のネタとなっているのだ。
ユーラス、マーニカ、ノラカンナ。この三国は、同じ民族、同じ宗教、同じ言語とと文化を持っている。三国の貴族達の殆どが親戚同士だった。元々は、一つの国だったのだが、ある時、三つ子の王子が生まれたことにより、三国に分割されたのだが、三つ子の王が亡くなった後も兄弟国として助け合っていた。
ザトラ人は素朴で勤勉な国民性で知られている。ユーラカスは三具のの中で最も南に位置していた。気候が温暖な海峡沿いにあり、魚介類がよくとれており、ユーラカスの干した魚はノラカンナの冬場の常備食となっていたのである。
山に囲まれた田舎で暮らしているノラカンナの貴族達は、夏になると海のあるユーラカスへと遊びに行くことを楽しみにしていた。
ちょうど、ユーラカスの西側にオスベル帝国属州があり、ユーラカスとザトラ三国の窓口のような役割を果たしていた。
三国の中で最も華やかな都を構えていたのだが、ある時を堺に戦場へと変わった。
あの夏、最初にユーラカスが狙われた。あれは、十二年前のことだ。一年もたたないうちにユーラカスの城は陥落して、その場にいた貴族達は自害したと聞いている。
(オレは幼い頃にユーラカスの城に向かったことがある……)
ユーラカスの女王だったノーチャはノラカンナの財務大臣の娘だった。
ノーチャは曲芸師のように上手に馬を乗りこなすことで有名だった。狩りも得意で侍女を連れて森によく出かけていたのだ。
ノーチャの侍女だと名乗るテラスの話をどこまで信じたらいいのか迷うところだが、言葉のアクセントでザトラ人だと分かる。
テラスは右腕に大きなバングルを嵌めていた。ザトラ人の女の奴隷の手首の内側には小さな刺青が彫られる。それを隠す為にバンクルだ。
元奴隷の印である。この女も戦禍の犠牲者だ。ザトラ民族にとっては、ゴヒは共通の敵である。
ザトラ三国のうち最後に残ったのがノラカンナだった。
ノラカンナは高原地帯の小さな国で王都は天然の要塞と呼べる山岳地帯の盆地にある。
兵士達はゴビの侵入を防ごうと抵抗した。しかし、海峡前の半島にゴビの遠征軍の兵站拠点が作られてからは戦況が不利になっていった。
四年前の冬。ノラカンナの第四王子のイリアスが率いる精鋭部隊が秘かに海峡を渡った。 ゴビの大半が岩だらけの荒れた土地が大半を占めていた。その南方には不毛な赤い砂漠が広がっている。
起死回生しようとしていた。ゴビの武器庫や兵站拠点を占拠するつもりだった。
この瞬間、少しばかりレンシーの中で風向きが変わった。テラスはゴビを敵視しているのだ。
ユーラカスは、十二年前にゴビによって崩壊している。
ザトラ三国の悲劇は、オスベルの吟遊詩人の恰好のネタとなっているのだ。
ユーラス、マーニカ、ノラカンナ。この三国は、同じ民族、同じ宗教、同じ言語とと文化を持っている。三国の貴族達の殆どが親戚同士だった。元々は、一つの国だったのだが、ある時、三つ子の王子が生まれたことにより、三国に分割されたのだが、三つ子の王が亡くなった後も兄弟国として助け合っていた。
ザトラ人は素朴で勤勉な国民性で知られている。ユーラカスは三具のの中で最も南に位置していた。気候が温暖な海峡沿いにあり、魚介類がよくとれており、ユーラカスの干した魚はノラカンナの冬場の常備食となっていたのである。
山に囲まれた田舎で暮らしているノラカンナの貴族達は、夏になると海のあるユーラカスへと遊びに行くことを楽しみにしていた。
ちょうど、ユーラカスの西側にオスベル帝国属州があり、ユーラカスとザトラ三国の窓口のような役割を果たしていた。
三国の中で最も華やかな都を構えていたのだが、ある時を堺に戦場へと変わった。
あの夏、最初にユーラカスが狙われた。あれは、十二年前のことだ。一年もたたないうちにユーラカスの城は陥落して、その場にいた貴族達は自害したと聞いている。
(オレは幼い頃にユーラカスの城に向かったことがある……)
ユーラカスの女王だったノーチャはノラカンナの財務大臣の娘だった。
ノーチャは曲芸師のように上手に馬を乗りこなすことで有名だった。狩りも得意で侍女を連れて森によく出かけていたのだ。
ノーチャの侍女だと名乗るテラスの話をどこまで信じたらいいのか迷うところだが、言葉のアクセントでザトラ人だと分かる。
テラスは右腕に大きなバングルを嵌めていた。ザトラ人の女の奴隷の手首の内側には小さな刺青が彫られる。それを隠す為にバンクルだ。
元奴隷の印である。この女も戦禍の犠牲者だ。ザトラ民族にとっては、ゴヒは共通の敵である。
ザトラ三国のうち最後に残ったのがノラカンナだった。
ノラカンナは高原地帯の小さな国で王都は天然の要塞と呼べる山岳地帯の盆地にある。
兵士達はゴビの侵入を防ごうと抵抗した。しかし、海峡前の半島にゴビの遠征軍の兵站拠点が作られてからは戦況が不利になっていった。
四年前の冬。ノラカンナの第四王子のイリアスが率いる精鋭部隊が秘かに海峡を渡った。 ゴビの大半が岩だらけの荒れた土地が大半を占めていた。その南方には不毛な赤い砂漠が広がっている。
起死回生しようとしていた。ゴビの武器庫や兵站拠点を占拠するつもりだった。