愛した人は剣奴だったから
 二人きりになると、否応なしに緊張か拡張していった。心臓がバクバクしていたが、相手に悟られたくなかったので無理をして微笑む。

「椅子に座って寛いでね。喉は渇いてないのかしら? カルパーニャ産の赤ワインはいかが?」

 腕組みをして立った横柄に眉をしかめて首を横に振るレンシーは上等な絹のオスベル風の衣服を身につけている。髪もオスベル風に短くなっており、襟足が見えている。テラスが指示して整えざせたのだろう。

 アデリアとしては女のように長い髪のレンシーの方が色っぽくて好きだ。

 ううん。短髪でも凛々しくて素敵。そんな浮かれたことを思っていると、鋭い視線を向けられてドキッとなった。

「飯は済ませている。風呂上りに薄荷茶を飲まされたが薄荷茶は好きじゃない。二度と出すなよ」

 一刀両断の鋭くて高飛車な物言いをしている。奴隷らしからぬ不遜な態度に呆然としていた。

(この人、怒ってるのかしら……)

 彼は、偉そうに腕組みをしたまま眉根にシワを寄せている。

「おまえがアデリアなのか? 最初に言っておくぞ。こんな場所に連れて来られて迷惑なんだよ!」

 いきなり、ガツンと叱られてしまい、えっというように目を丸める。蝶の羽を思わせる桃色の柔らかな絹の寝間着を身につけているアデリアは、トクンと鼓動を震わせながら言う。

「あ、あの……、こんなことになってごめんなさい」

「いや、許さない」

 レンシーが進み出て腕を伸ばすと軽々と抱きかかえた。そのまま薔薇の花びらを散りばめた寝具の上へと降ろした。

「えっ……」

 彼は獅子の様に四つん這いになると、覆いかぶさるようにしてアデリアの肢体の上に跨ったのだ。見下ろしたまま威嚇するように低く呟いている。

「いいか、おまえが悲鳴をあげようと泣き叫ぼうとやることはやるぞ」

 彼の息からは薄荷の爽やかな香りが漂っている。

 猛禽類を彷彿させる高い鼻筋と少年のように鋭角な顎。黒曜石のように滑らかな輝きを秘めた瞳と勝気そうな口許。すべてが完璧だ。こうして会えた事が嬉しいが、何を話せばいいのか分からない。一方、彼は顔を曇らせて不快そうにしている。

 彼は、アデリアの柔らかい質感のドレスの腰紐を解いた。

 なぜ、こんな事をしなければならないのかと言いたげな顔で苛立っているが、それでも、やるべき事はやるつもりでいるらしい。彼は、少し手間取りながらも、ドレスの肩の留め具も外していく。

 すると、アデリアの両肩からストンと無造作に布地が滑り落ちた。ベリッ。内衣も花びらをちぎるように剥ぎ取られてヒヤリとなる。鎖骨や胸元などが露になると、トクンと体の深いところが音を立てた。

彼の吐息と共に彼の唇が肌に吸い付く。その感覚が艶かしくてゾクッとなる。柔らかな肌に不思議な痣のようにものが生まれている。

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