愛した人は剣奴だったから
許さない! 絶対に許さない! カーッと全身が焼け付くような気持ちが膨らむ。
衝動的に壷の取っ手を握りしめると階下に駆け下りていった。燃え滾る怒りを抑えられなかった。レンシーに跨ったまま喘いでいるユカラの背中めがけて駆けていく。
後先の事など考えずに、大きな壷を振り上げて、その後頭部にぶつけていたのだ。
ガッシャーン。
恐ろしい事にユカラの側頭部に直撃している。少しフラリと揺れながらユカラは額を押さえると、クッと身体を崩しながら長椅子からダラリと落ちた。
「ぐっ……」
裂傷した後頭部から生暖かい血がドクドクと流れて血溜まりが出来たのだ。
ユカラは目を引ん剥いたまま動かなくなっている。レンシーがユカラの首筋に手を添えて首を振る。彼は振り返ると、棒立ちしているアデリアを見上げて詰った
「こいつは死んだぞ! アデリア! なぜ殺した!」
「レンシーが悪いのよ! だって、あなたが……!」
だって、あなたがあんな事をするから……。
言い終えないうちに視界が不規則にうねり始めてきた。
ザーザー、ひどい耳鳴りが始まっている。煮つめられた鉛を呑み込んだように胸が苦しくて焦燥感が破裂していくのを抑えられなくなっている。
『レンシー、一緒に逃げましょう!』
おかしい。喉を命一杯開いたのに声が出ない。突然、目の前の景色がすべて消え散った。
(えっ?)
次の瞬間、煌びやかな光の粒子が飛び込んできた。業火に焼き尽くされたかのような恐怖を感じて皮膚がゾワゾワと毛羽立つ。染料をぶちまけたかのように視界か赤く染まる。恐ろしさの余り息が出来なかった。泣きながら、その場にしゃかみ込んで絶叫する。
「いやーーーーっ」
恐怖に慄きながら叫ぶと急に視界が開けた。
何か起きたのか理解が追いつかないまま息を乱していた。はぁはぁ。
「アデリア様! どうかなさいましたか! 夢でも御覧になられましたか」
その声に誘われるように顔を上げると侍女のナイナが心配そうに見つめていた。いつもの光景がそこにあった。アデリアの寝室は長閑な朝の光に包まれている。
(それじゃ、今のは夢だったの?)
ポカンとしたまま周囲を見していくけれども、まだ自分がどこにいるのか実感がなかった。
枕元にある水差しの水を飲み干すと、やっと完全に目が覚めた。でも、怖い想いは胸にこびりついている。念の為に確認せずにはいられない。
「ねぇ、ユカラは元気なの? あの人は生きてる?」
「はい。もちろん生きておられますよ。ですが、ひどい二日酔いで眠っておられますわね」
侍女が差し出した手鏡を覗き込むと瞼が重たく腫れていた。
(ああ、恥しい。あんな破廉恥な夢を見るなんてどうかしているわ……)
衝動的に壷の取っ手を握りしめると階下に駆け下りていった。燃え滾る怒りを抑えられなかった。レンシーに跨ったまま喘いでいるユカラの背中めがけて駆けていく。
後先の事など考えずに、大きな壷を振り上げて、その後頭部にぶつけていたのだ。
ガッシャーン。
恐ろしい事にユカラの側頭部に直撃している。少しフラリと揺れながらユカラは額を押さえると、クッと身体を崩しながら長椅子からダラリと落ちた。
「ぐっ……」
裂傷した後頭部から生暖かい血がドクドクと流れて血溜まりが出来たのだ。
ユカラは目を引ん剥いたまま動かなくなっている。レンシーがユカラの首筋に手を添えて首を振る。彼は振り返ると、棒立ちしているアデリアを見上げて詰った
「こいつは死んだぞ! アデリア! なぜ殺した!」
「レンシーが悪いのよ! だって、あなたが……!」
だって、あなたがあんな事をするから……。
言い終えないうちに視界が不規則にうねり始めてきた。
ザーザー、ひどい耳鳴りが始まっている。煮つめられた鉛を呑み込んだように胸が苦しくて焦燥感が破裂していくのを抑えられなくなっている。
『レンシー、一緒に逃げましょう!』
おかしい。喉を命一杯開いたのに声が出ない。突然、目の前の景色がすべて消え散った。
(えっ?)
次の瞬間、煌びやかな光の粒子が飛び込んできた。業火に焼き尽くされたかのような恐怖を感じて皮膚がゾワゾワと毛羽立つ。染料をぶちまけたかのように視界か赤く染まる。恐ろしさの余り息が出来なかった。泣きながら、その場にしゃかみ込んで絶叫する。
「いやーーーーっ」
恐怖に慄きながら叫ぶと急に視界が開けた。
何か起きたのか理解が追いつかないまま息を乱していた。はぁはぁ。
「アデリア様! どうかなさいましたか! 夢でも御覧になられましたか」
その声に誘われるように顔を上げると侍女のナイナが心配そうに見つめていた。いつもの光景がそこにあった。アデリアの寝室は長閑な朝の光に包まれている。
(それじゃ、今のは夢だったの?)
ポカンとしたまま周囲を見していくけれども、まだ自分がどこにいるのか実感がなかった。
枕元にある水差しの水を飲み干すと、やっと完全に目が覚めた。でも、怖い想いは胸にこびりついている。念の為に確認せずにはいられない。
「ねぇ、ユカラは元気なの? あの人は生きてる?」
「はい。もちろん生きておられますよ。ですが、ひどい二日酔いで眠っておられますわね」
侍女が差し出した手鏡を覗き込むと瞼が重たく腫れていた。
(ああ、恥しい。あんな破廉恥な夢を見るなんてどうかしているわ……)