愛した人は剣奴だったから
「おまえに関わるとロクなことがない。つーか、ここは奴隷専用の便所なんだよ! こんなところ誰かに見られたらこっちが困るんだ。出て行ってくれよ」
「きゃっーー」
強引に肩を押し出されて外へと追い出されてしまった。彼は、無言のままガチャンと扉を閉じてから鍵をかけたのだった。完全な拒否だ。。
「ねぇ、ここ、開けてよ」
アデリアは戸口に拳を振り下ろす。しかし、内側にいるレンシーは無言を貫いている。アデリアは拳で連打する事に疲れてしまい頬を膨らませる。衝動的にその場を離れると浴室に飛び込んでいた。油容器を握り締めると、苛立ちを発散するように力任せに壁に投げつけていたのである。
「ア、アデリア様! どうなさいました」
不穏な音を聞きつけた侍女が脱衣所に駆けつけてきた。八つ当たりをして申し訳ないが顔を逸らした。涙目になりながらも命令していく。
「何でもないわ。床を片付けたらここから出て行きなさい!」
「でも、お一人で入浴なんて……」
「馬鹿にしないで。お風呂に入るぐらい一人で大丈夫よ!」
これ以上、惨めな姿を見られたくなかった。本当に惨めだった。侍女が消え去った後、石の長椅子に腰掛けた。蒸気で暖められているので座面は温かく湿っている。
アデリアは鬱屈した感情を吐き出すようにして叫ぶ。
「レンシーの馬鹿ぁ! 大嫌い! 死んじゃえばいいのよ!」
なぜ、こんなにも悲しいのだろうか。フレスコ画で彩られた浴室の片隅に座ったまま泣いていた。
彼は、ユカラの屋敷に行くつもりでいる。ユカラの愛人になってもいいと思っているらしい。
「レンシーを誰にも渡したくない……」
つい、本音が漏れ落ちていく。その時、脱衣所でカタンと微かな物音がした。また侍女が来たのかと思ったがそうではなかった。
「何を悩んでおられるのですか? お慰めしましょうか?」
えっ……。どうして、セネカが来たのだろう。腰布一枚という姿で踏み込んできたものだから得体の知れない恐怖を感じる。アデリアは裸だ。カッと羞恥にみまわれて睨みつける。
「勝手に入ってこないでよ! どういうつもりよ! 人を呼ぶわよ!」
本気で追い払っているというのに細く整えた眉根を下げて媚びを含んだように微笑んでいる。安っぽい仮面のような無機質な薄笑いにゾッとなる。
「レンシーとの別れが悲しのですね。慰めするようにとシルミス様に言われて参りました。さぁ、お寛ぎください。御奉仕いたします」
「シルミスお姉様に伝えてよ! あなたなんて必要ないわ!」
「いえいえ、拒否されたならば僕の評判に傷がつきますよ」
「きゃっーー」
強引に肩を押し出されて外へと追い出されてしまった。彼は、無言のままガチャンと扉を閉じてから鍵をかけたのだった。完全な拒否だ。。
「ねぇ、ここ、開けてよ」
アデリアは戸口に拳を振り下ろす。しかし、内側にいるレンシーは無言を貫いている。アデリアは拳で連打する事に疲れてしまい頬を膨らませる。衝動的にその場を離れると浴室に飛び込んでいた。油容器を握り締めると、苛立ちを発散するように力任せに壁に投げつけていたのである。
「ア、アデリア様! どうなさいました」
不穏な音を聞きつけた侍女が脱衣所に駆けつけてきた。八つ当たりをして申し訳ないが顔を逸らした。涙目になりながらも命令していく。
「何でもないわ。床を片付けたらここから出て行きなさい!」
「でも、お一人で入浴なんて……」
「馬鹿にしないで。お風呂に入るぐらい一人で大丈夫よ!」
これ以上、惨めな姿を見られたくなかった。本当に惨めだった。侍女が消え去った後、石の長椅子に腰掛けた。蒸気で暖められているので座面は温かく湿っている。
アデリアは鬱屈した感情を吐き出すようにして叫ぶ。
「レンシーの馬鹿ぁ! 大嫌い! 死んじゃえばいいのよ!」
なぜ、こんなにも悲しいのだろうか。フレスコ画で彩られた浴室の片隅に座ったまま泣いていた。
彼は、ユカラの屋敷に行くつもりでいる。ユカラの愛人になってもいいと思っているらしい。
「レンシーを誰にも渡したくない……」
つい、本音が漏れ落ちていく。その時、脱衣所でカタンと微かな物音がした。また侍女が来たのかと思ったがそうではなかった。
「何を悩んでおられるのですか? お慰めしましょうか?」
えっ……。どうして、セネカが来たのだろう。腰布一枚という姿で踏み込んできたものだから得体の知れない恐怖を感じる。アデリアは裸だ。カッと羞恥にみまわれて睨みつける。
「勝手に入ってこないでよ! どういうつもりよ! 人を呼ぶわよ!」
本気で追い払っているというのに細く整えた眉根を下げて媚びを含んだように微笑んでいる。安っぽい仮面のような無機質な薄笑いにゾッとなる。
「レンシーとの別れが悲しのですね。慰めするようにとシルミス様に言われて参りました。さぁ、お寛ぎください。御奉仕いたします」
「シルミスお姉様に伝えてよ! あなたなんて必要ないわ!」
「いえいえ、拒否されたならば僕の評判に傷がつきますよ」