愛した人は剣奴だったから
「イヤよ! あたしに何もしないで」
「分かっている。今は何もしない。風呂に入るだけだよ」
そう言うと、彼はアデリアの衣服を一気に引き下ろして脱がせてしまった。
「きゃっ!」
アデリアは、裸のまま呆然としていた。彼の、落ち着いた態度と視線がアデリアの鼓動をより激しくさせる。
ずっと小刻みに恥しそうに震えていた。皮膚の感覚が敏感になっている。ドクンドクンと胸が高鳴っている。意識すればするほど胸が高鳴り頬と首筋が真っ赤になってしまう。
「な、なんで、あたしの身体を見るの?」
「おまえを見たいからだよ。恥ずかしいなら目を閉じていろよ」
そう言うとアデリアを両腕で抱きかかえて歩き出したのだ。蒸し風呂の中央には冷水の入った水盤が設置されている。レンシーは、アデリアの赤く腫れた足の指に視線を落とながら哀しそうに言う。
「歩き続けたせいだよな。おまえの小指の皮がめくれているぞ。ふくらはぎが疲れてないか?」
「身体中が筋肉痛になっているわ。もうクタクタよ」
「そうだろうな」
レンシーは丁寧に足の裏をマッサージしている。旅の疲れをほぐそうとしている。
「ごめんね」
「いいさ。ここでは、おまえが姫君でオレは奴隷なんだ」
言いながら、背中や髪にこびりついた汚れを丁寧に指先で洗い取っているのだ。優しい手つきだった。温かくて清潔な水をザッとかけていく。侍女がアデリアにしてくれることだった。アデリアはアタフタしたように止めようとする。
「レ、レンシー、いいわよ。そんなことしなくても」
「でも、おまえ、自分で髪を洗う方法を知らないだろ。ほら、俯いて目を閉じろよ」
言いながら、手馴れた手つきで埃にまみれた髪を洗ってくれている。
「子供の頃、故郷の厩舎で軍馬の背中を梳いていた時のことを思い出すなぁ」
「馬と一緒にしないでよ!」
軽口を叩きながらも、アデリアはドギマギして視線を落としていた。この時、浴槽のタイルに血の筋が流れていることに気付いてハッとなる。
(大変! これは、あたしの血じゃないわ。レンシー、足の裏を怪我しているんだわ!)
割れた壷の破片を踏んでしまったのかもしれない。それなのに、アデリアを担いで庭から浴室まで裸足で歩き続けていたのだ。申し訳なくなり、レンシーの脚に手を添えて覗き込んでいた。
「大変よ! 怪我をしているわよ。足の裏を見せて」
彼の足の裏を抱えるようにして、しげしげと視線を落としていく。目を細めて熱心に傷口を見つめ続けていた。青銅製の毛抜きを手にしていた。慎重に彼の足裏に埋もれている小さな破片を取り除く。
薄暗い中、アデリアは唇を尖らせて苦心している。そして、それらは、ようやく抜けたのだ。
「ふう、やっと取れたわ! ごめんね、レンシー。あたしのせいで、苦労ばっかりしちゃうよね」
「分かっている。今は何もしない。風呂に入るだけだよ」
そう言うと、彼はアデリアの衣服を一気に引き下ろして脱がせてしまった。
「きゃっ!」
アデリアは、裸のまま呆然としていた。彼の、落ち着いた態度と視線がアデリアの鼓動をより激しくさせる。
ずっと小刻みに恥しそうに震えていた。皮膚の感覚が敏感になっている。ドクンドクンと胸が高鳴っている。意識すればするほど胸が高鳴り頬と首筋が真っ赤になってしまう。
「な、なんで、あたしの身体を見るの?」
「おまえを見たいからだよ。恥ずかしいなら目を閉じていろよ」
そう言うとアデリアを両腕で抱きかかえて歩き出したのだ。蒸し風呂の中央には冷水の入った水盤が設置されている。レンシーは、アデリアの赤く腫れた足の指に視線を落とながら哀しそうに言う。
「歩き続けたせいだよな。おまえの小指の皮がめくれているぞ。ふくらはぎが疲れてないか?」
「身体中が筋肉痛になっているわ。もうクタクタよ」
「そうだろうな」
レンシーは丁寧に足の裏をマッサージしている。旅の疲れをほぐそうとしている。
「ごめんね」
「いいさ。ここでは、おまえが姫君でオレは奴隷なんだ」
言いながら、背中や髪にこびりついた汚れを丁寧に指先で洗い取っているのだ。優しい手つきだった。温かくて清潔な水をザッとかけていく。侍女がアデリアにしてくれることだった。アデリアはアタフタしたように止めようとする。
「レ、レンシー、いいわよ。そんなことしなくても」
「でも、おまえ、自分で髪を洗う方法を知らないだろ。ほら、俯いて目を閉じろよ」
言いながら、手馴れた手つきで埃にまみれた髪を洗ってくれている。
「子供の頃、故郷の厩舎で軍馬の背中を梳いていた時のことを思い出すなぁ」
「馬と一緒にしないでよ!」
軽口を叩きながらも、アデリアはドギマギして視線を落としていた。この時、浴槽のタイルに血の筋が流れていることに気付いてハッとなる。
(大変! これは、あたしの血じゃないわ。レンシー、足の裏を怪我しているんだわ!)
割れた壷の破片を踏んでしまったのかもしれない。それなのに、アデリアを担いで庭から浴室まで裸足で歩き続けていたのだ。申し訳なくなり、レンシーの脚に手を添えて覗き込んでいた。
「大変よ! 怪我をしているわよ。足の裏を見せて」
彼の足の裏を抱えるようにして、しげしげと視線を落としていく。目を細めて熱心に傷口を見つめ続けていた。青銅製の毛抜きを手にしていた。慎重に彼の足裏に埋もれている小さな破片を取り除く。
薄暗い中、アデリアは唇を尖らせて苦心している。そして、それらは、ようやく抜けたのだ。
「ふう、やっと取れたわ! ごめんね、レンシー。あたしのせいで、苦労ばっかりしちゃうよね」