愛した人は剣奴だったから
見物している者達が野次を飛ばしている。ガイウスはレンシーの胃袋の辺りをねじ上げるように殴りつけている。レンシーは常に劣勢だった。無理も無い。相手の方が背も高くて腕が長い。
「ちょっと! そこの色男! 足がふらついているよ! しっかりしな!」
この屋敷の使用人の女達はレンシーに肩入れしている。
「あーん。何てこった。男前は砂地に脚をとられているようだよ」
女達が言うようにレンシーの脚の動きは鈍かった。
「やだ! また顔を殴られちまったよ! 男前が台無しじゃないかよ!」
奴隷の男達が、したり顔で分析している。
「ガイウス様はガキの頃から拳闘で身体を鍛えていたから慣れたもんだよ。ガイウス様の攻撃力と持久力は凄まじいぜ。あの男前は最初から打たれっぱなしだな。あれじゃ、身が持たねぇぞ。もうすぐ死ぬぞ」
「そうだよな。ほとんど反撃していないんだからな」
レンシーは口や鼻から血を流している。額や口許を切っている。殴られる度にふらつく。
(これは試合じゃないわ。陰惨な殺し合いの見世物だわ)
闘鶏や闘羊と同じ。どちらが勝つかを賭けている客達はギラギラとした顔で興奮している。
レンシーの端正な顔が腫れた。
右目の瞼の上が切れて血がしたたり落ちていく。そんなレンシーに向けて、ガイウスが砂を握り締めて擦りつけていく。アデリアは顔色を変えた叫んだ。
「卑怯者!」
レンシーが目暗ましによろけた隙に決定的な一撃を顎に打ち込んでいる。レンシーは地面に膝を折り曲げて両手をついて呻いている。
ガイウスが嘲笑するような目付きで言う。
「早く、負けを認めろよ。降参しろよ。そしたら殴るのを止めてやるぜ」
足蹴にしながら傲慢な笑みを浮かべている。しかし、降参は死を意味している。
一晩中、アデリアを背負って歩き続けたせいで疲れている。
昨日、割れた壷の破片が足の裏に刺さっている。そのことで不利になっているに違いない。
「どうした。返事をしろよ」
レンシーの顔を踏みつけるガイウスの眼はギラついている。明らかに彼は自分に酔って高揚していた。これから。時間をかけていたぶるつもりなのだ。
「どうやら、彼も役に立たなかったようね。残念だわ」
気がつくと、ルーダがアデリアの背後に立っていた。レンシーが痛めつけられる様子を冷静に眺めている。アデリアはムキになって睨んだ。
「どうして、そんなに平気な顔でいられるのよ! レンシーは、あいつに殺されるかもしれないのよ!」
「それが何よ。わたしの恋人じゃないのよ」
言い捨てながら、アデリアを眺めまわしていく。
「まだ処女なのね?」
「そ、そんなこと、あなたに関係ないわ!」
「ふふ、わたしも昔は華奢な子供だったのよ」
頼んでもいないのに自分のことを語っている。
「ちょっと! そこの色男! 足がふらついているよ! しっかりしな!」
この屋敷の使用人の女達はレンシーに肩入れしている。
「あーん。何てこった。男前は砂地に脚をとられているようだよ」
女達が言うようにレンシーの脚の動きは鈍かった。
「やだ! また顔を殴られちまったよ! 男前が台無しじゃないかよ!」
奴隷の男達が、したり顔で分析している。
「ガイウス様はガキの頃から拳闘で身体を鍛えていたから慣れたもんだよ。ガイウス様の攻撃力と持久力は凄まじいぜ。あの男前は最初から打たれっぱなしだな。あれじゃ、身が持たねぇぞ。もうすぐ死ぬぞ」
「そうだよな。ほとんど反撃していないんだからな」
レンシーは口や鼻から血を流している。額や口許を切っている。殴られる度にふらつく。
(これは試合じゃないわ。陰惨な殺し合いの見世物だわ)
闘鶏や闘羊と同じ。どちらが勝つかを賭けている客達はギラギラとした顔で興奮している。
レンシーの端正な顔が腫れた。
右目の瞼の上が切れて血がしたたり落ちていく。そんなレンシーに向けて、ガイウスが砂を握り締めて擦りつけていく。アデリアは顔色を変えた叫んだ。
「卑怯者!」
レンシーが目暗ましによろけた隙に決定的な一撃を顎に打ち込んでいる。レンシーは地面に膝を折り曲げて両手をついて呻いている。
ガイウスが嘲笑するような目付きで言う。
「早く、負けを認めろよ。降参しろよ。そしたら殴るのを止めてやるぜ」
足蹴にしながら傲慢な笑みを浮かべている。しかし、降参は死を意味している。
一晩中、アデリアを背負って歩き続けたせいで疲れている。
昨日、割れた壷の破片が足の裏に刺さっている。そのことで不利になっているに違いない。
「どうした。返事をしろよ」
レンシーの顔を踏みつけるガイウスの眼はギラついている。明らかに彼は自分に酔って高揚していた。これから。時間をかけていたぶるつもりなのだ。
「どうやら、彼も役に立たなかったようね。残念だわ」
気がつくと、ルーダがアデリアの背後に立っていた。レンシーが痛めつけられる様子を冷静に眺めている。アデリアはムキになって睨んだ。
「どうして、そんなに平気な顔でいられるのよ! レンシーは、あいつに殺されるかもしれないのよ!」
「それが何よ。わたしの恋人じゃないのよ」
言い捨てながら、アデリアを眺めまわしていく。
「まだ処女なのね?」
「そ、そんなこと、あなたに関係ないわ!」
「ふふ、わたしも昔は華奢な子供だったのよ」
頼んでもいないのに自分のことを語っている。