愛した人は剣奴だったから
 アデリアは少し寂しそうに目を細めていく。彼と、この部屋で結ばれたのだ。

「選挙が終わる前に、この街を脱出するべきだと思う」

「そうね」

 選挙に人員が割かれてる間なら逃げられるかもしれない。

(それにしても、まさか、こんな事件に巻き込まれるなんて……)

 でも、不思議と後悔はしていない。

 ここから立ち去るのが惜しい気がしてきた。ここでの時間は濃密で特別なものになっている。

 レンシーの匂い。レンシーの声。レンシーの温もり。ここには、記憶の欠片がたくさん残されている。

 彼を失ったと思った時は自分も死のうと本気で思った。こんな気持ちになるなんて、思ってもみなかった。アデリアはレンシーを何よりも愛している。

(きっと、この先も、ここでの出来事を忘れない……)
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