愛した人は剣奴だったから
ハラハラしながら振り返って様子を窺うと、レンシーが剣を構えて闘っていた。追っ手を相手に斬りつけている。
(あたしは足手まといになるから逃げた方がいいのよね)
戸惑いながらもアデリアは角を曲がる。すると、不意に店舗の隣の路地から女の子が飛び出してきたのだ。あれは、アデリアの荷物を盗んだ洗濯屋の女の子だ。
「こっち!」
いきなり、そう言われてキョトンとなる。
「こっちに早く来て!」
女の子が一生懸命に手招きしている。どうやら、アデリアを助けようとしているらしい。
誘われるがままに人が通るのが精一杯の路地を進んだ。倉庫のある建物へと辿り着いていた。
どうやら、ここは洗濯屋さんのようだ。目の前に仕上げ用の圧搾機が置いてある。
「あ、ありがとう。あなたは助けてくれたのね?」
コクンと頷いている。喋ることが苦手らしい。樽の前で作業をしていた男性が出てきたのは知らない男だった。
肉体労働者特有の逞しい肩をしている。重い荷物も軽々と運べるに違いない。三十歳ぐらいの男性がアデリアに向かって丁寧な口調で言う。
「初めまして。僕がここの経営者のクロティウスです。この子の母親の弟です。あなた方のことはルーダから聞いています。この子の父親は以前はここで働いていましたが、店の金を横領して逃げました。今も行方が分かりません」
元はと言えば、この女の子のせいで、レンシーは妙な試合に出ることになったのだ。
「助けて! ガイウスの兄のガイアが彼を殺そうとしているのよ!」
「分かっています。ルーターは、レンシーが、今朝、ここを通ることをあいつらに漏らしています」
「えっ?」
なぜ、そんなことを?
「レンシーにガイアを殺させるつもりなのですよ。そうすれば、パドの天敵の息子達はみんないなくなる。復讐が完了するのです」
「そ、そんなぁ!」
またしても利用しようとしたらしい。腹が立ったけれども今はそれどころではない。
「レンシーを助けなくちゃ!」
「駄目です。ここにいてください。彼を信じましょう」
アデリアの手を引くと共同住宅の三階の窓辺へと連れて行った。
建物と建物の間にある石畳の坂の向こう側に馬車がポツンと放置されていた。ます、一人、そこに倒れている。レンシーが斬ったのだ。
「他の手下の男達も死んでいますよ」
しかし、ガイアは生きている。彼だけがレンシーを追いかけている。しかし、角を曲がる瞬間、二階のベランダの窓から手が出てきたかと思うと、誰かが、尿瓶の中のものをガイアにぶちまけていたのである。
「うわっ! てめぇーーーーーーーー、なにしやがる!」
ガイアは頭から生暖かな尿をかぶり、凄まじい形相で睨み上げている。
「おやまぁ、いたのかい?」
(あたしは足手まといになるから逃げた方がいいのよね)
戸惑いながらもアデリアは角を曲がる。すると、不意に店舗の隣の路地から女の子が飛び出してきたのだ。あれは、アデリアの荷物を盗んだ洗濯屋の女の子だ。
「こっち!」
いきなり、そう言われてキョトンとなる。
「こっちに早く来て!」
女の子が一生懸命に手招きしている。どうやら、アデリアを助けようとしているらしい。
誘われるがままに人が通るのが精一杯の路地を進んだ。倉庫のある建物へと辿り着いていた。
どうやら、ここは洗濯屋さんのようだ。目の前に仕上げ用の圧搾機が置いてある。
「あ、ありがとう。あなたは助けてくれたのね?」
コクンと頷いている。喋ることが苦手らしい。樽の前で作業をしていた男性が出てきたのは知らない男だった。
肉体労働者特有の逞しい肩をしている。重い荷物も軽々と運べるに違いない。三十歳ぐらいの男性がアデリアに向かって丁寧な口調で言う。
「初めまして。僕がここの経営者のクロティウスです。この子の母親の弟です。あなた方のことはルーダから聞いています。この子の父親は以前はここで働いていましたが、店の金を横領して逃げました。今も行方が分かりません」
元はと言えば、この女の子のせいで、レンシーは妙な試合に出ることになったのだ。
「助けて! ガイウスの兄のガイアが彼を殺そうとしているのよ!」
「分かっています。ルーターは、レンシーが、今朝、ここを通ることをあいつらに漏らしています」
「えっ?」
なぜ、そんなことを?
「レンシーにガイアを殺させるつもりなのですよ。そうすれば、パドの天敵の息子達はみんないなくなる。復讐が完了するのです」
「そ、そんなぁ!」
またしても利用しようとしたらしい。腹が立ったけれども今はそれどころではない。
「レンシーを助けなくちゃ!」
「駄目です。ここにいてください。彼を信じましょう」
アデリアの手を引くと共同住宅の三階の窓辺へと連れて行った。
建物と建物の間にある石畳の坂の向こう側に馬車がポツンと放置されていた。ます、一人、そこに倒れている。レンシーが斬ったのだ。
「他の手下の男達も死んでいますよ」
しかし、ガイアは生きている。彼だけがレンシーを追いかけている。しかし、角を曲がる瞬間、二階のベランダの窓から手が出てきたかと思うと、誰かが、尿瓶の中のものをガイアにぶちまけていたのである。
「うわっ! てめぇーーーーーーーー、なにしやがる!」
ガイアは頭から生暖かな尿をかぶり、凄まじい形相で睨み上げている。
「おやまぁ、いたのかい?」