愛した人は剣奴だったから
「うちは、いつも契約している貨物用の船に製品を載せています。あなた達を箱に詰めて輸送します」
丹念に仕上げた製品は、毎週、決まった時刻に船に積み込まれていくというのである。
一時間後に出航する河船があるので、それに乗るように勧められたのだ。クロティウスが尋ねてきた。
「箱の中は狭いですが、よろしいですか?」
「ええ、いいわよ」
「ああ、いいぜ」
それから、すぐに、レンシーとアデリアは一緒に箱詰めされていたのである。
他の商品と同じように倉庫へと運ばれた後、作業員によって荷馬車に積み込まれていた。
二人が並んで座るのが精一杯という感じの木箱の中でレンシーが呟いた。
「ああ、オレは何をやってんだ。ルーダの思惑通りになったってことのようだな」
利用されたことに怒ることもなく面白がっている。
洗濯屋の少女の名前はポンパイワ。アデリアから奪った宝石をちゃんと返してくれている。
父親のセドゥスは賭博場で多額の借金を抱えていた。返済を免除する代わりに拳闘の試合に出ることを強要されて逃げ出したのである。
レンシーがいなければ別の男が出場していただろう。そうなると、ルーダは復讐を遂げられなかったに違いない。
木箱に入る前、クロティウスがレンシーに言ったのだ。
『この街の住人を代表してお礼を申し上げます。ガイウス兄弟を消し去ってくれた事に我々は感謝しています。あの兄弟は生まれつき凶暴で残忍でしたからね』
悪名高き兄弟の死は住人にとって喜ばしいことだが、兄弟の父は息子の敵討ちをしようと燃えており、河沿いの船着場はもちろん、外へと繋がる門の全てに見張りを置いているという。
洗濯屋の積荷を乗せた馬車が埠頭へ向かっているけれども、御者の男や担ぎ手達は、その中の一つにアデリアとレンシーがいるなんて聞かされていない。
彼等は荷物としてアデリア達を運んでいる。
「かの有名な妖艶な砂漠の女王ゾレスの気分だよな」
スリルを楽しんでいるのかレンシーは心地良さげ囁いた。
「こういうのって、なんだかゾクゾクするよな」
女王は、逃亡の際に香辛料の袋の中に身を潜めたというのは有名な話である。レンシーを追っている者達は、まさか、そんなところに入っているなど夢にも思ってもいないようである。
背後にいるレンシーーがアデリアの耳朶をくすぐるようなに囁いていく。
「アデリア、こっち向いてくれよ」
「駄目よ。身動きできないのよ。ねぇ、喋らないでよ。声が聞こえちゃうでしょう」
織物にくるまれた狭い木箱の中で困ったように囁いた。すると、レンシーは、アデリアの右耳の耳朶に唇を寄せたまま片目を瞑っている。
「じゃ、おまえの耳を食べちゃうぞ」
「レンシーって、子供みたいよね」
丹念に仕上げた製品は、毎週、決まった時刻に船に積み込まれていくというのである。
一時間後に出航する河船があるので、それに乗るように勧められたのだ。クロティウスが尋ねてきた。
「箱の中は狭いですが、よろしいですか?」
「ええ、いいわよ」
「ああ、いいぜ」
それから、すぐに、レンシーとアデリアは一緒に箱詰めされていたのである。
他の商品と同じように倉庫へと運ばれた後、作業員によって荷馬車に積み込まれていた。
二人が並んで座るのが精一杯という感じの木箱の中でレンシーが呟いた。
「ああ、オレは何をやってんだ。ルーダの思惑通りになったってことのようだな」
利用されたことに怒ることもなく面白がっている。
洗濯屋の少女の名前はポンパイワ。アデリアから奪った宝石をちゃんと返してくれている。
父親のセドゥスは賭博場で多額の借金を抱えていた。返済を免除する代わりに拳闘の試合に出ることを強要されて逃げ出したのである。
レンシーがいなければ別の男が出場していただろう。そうなると、ルーダは復讐を遂げられなかったに違いない。
木箱に入る前、クロティウスがレンシーに言ったのだ。
『この街の住人を代表してお礼を申し上げます。ガイウス兄弟を消し去ってくれた事に我々は感謝しています。あの兄弟は生まれつき凶暴で残忍でしたからね』
悪名高き兄弟の死は住人にとって喜ばしいことだが、兄弟の父は息子の敵討ちをしようと燃えており、河沿いの船着場はもちろん、外へと繋がる門の全てに見張りを置いているという。
洗濯屋の積荷を乗せた馬車が埠頭へ向かっているけれども、御者の男や担ぎ手達は、その中の一つにアデリアとレンシーがいるなんて聞かされていない。
彼等は荷物としてアデリア達を運んでいる。
「かの有名な妖艶な砂漠の女王ゾレスの気分だよな」
スリルを楽しんでいるのかレンシーは心地良さげ囁いた。
「こういうのって、なんだかゾクゾクするよな」
女王は、逃亡の際に香辛料の袋の中に身を潜めたというのは有名な話である。レンシーを追っている者達は、まさか、そんなところに入っているなど夢にも思ってもいないようである。
背後にいるレンシーーがアデリアの耳朶をくすぐるようなに囁いていく。
「アデリア、こっち向いてくれよ」
「駄目よ。身動きできないのよ。ねぇ、喋らないでよ。声が聞こえちゃうでしょう」
織物にくるまれた狭い木箱の中で困ったように囁いた。すると、レンシーは、アデリアの右耳の耳朶に唇を寄せたまま片目を瞑っている。
「じゃ、おまえの耳を食べちゃうぞ」
「レンシーって、子供みたいよね」