愛した人は剣奴だったから
「おまえ、何を言っているんだよ。この先、例え、オレが先に死ぬようなことがあっても、おまえだけは生きろ」

 レンシーは強く言い聞かせるようにこちらを見つめている。

「分かったわ。でも、レンシーはそう簡単に死なないわ。だって、すごく丈夫そうだもの」

 この先、どんな嵐か来ても、この人となら一緒に乗り越えられる気がする。寄り添ったままアデリアはまどろんでいた。

 嵐の後の海は凪いでいる。甘くけだるい空気の中に雑音が混じっている。水夫達も安心して眠っているのだろう。

 レンシーは、何か思い出したように肩を揺らして笑った。

「おまえがオレに抱きついていたから、水夫たちはオレ達のことを男同士のカップルだと思ったみたいだな。でも、あいつら、おまえが、怪我人の手当てをしてくれたおかげで助かったって言っていたよ」

 器用な手つきで負傷した怪我人の傷口を縫った。アデリアは、レンシーの介抱をして以来、血を見ても平気になっている。

「ちょっと寒いな。日が差したら暑くなるかな」

 アデリアの身体を抱きしめている。嵐のせいで針路から外れたが、それでも、あと数日で辿り着くと船長が言ったのだ。狭い船内で二人は互いに口付け合う。

 感嘆せずにはいられない。レンシーの皮膚の滑らかさ。その筋肉や骨に包まれていると涙ぐみそうになる。自分は彼に愛されている。彼は、ゆっくりと体勢を変えている。アデリアを仰向けにすると、正面から抱きしめた。

 また愛し合った。こうやって身体を重ねていると熱い血潮がうねり快楽の海に溺れ続けて気が遠くなる。こんな関係が永遠に続けばいいのに。

 愛している。誰よりも愛している。

 アデリアの心は彼を求め続けている。

 この夜、明け方近くまで睦み合い、お互いの体温を確かめるようにして抱き合っていたのだった。
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