その甘さに、くらくら。
 血液の味に違和感を覚え始めたのは、あれから数週間が経った頃だった。定期的に購入し、飲んでいる血が、全てゴムの味に変わっていたのだ。たまに、あまり美味しいとは感じない血に当たることはあるが、それは数えられる程度で。ほとんどの血はそれなりに甘いものだったにも拘わらず、気づけば全ての血液がゴムの味で、酷く不味く感じるようになっていた。

 思い当たる節はあったが、確認するのが恐ろしかった。だから、気づかないふりをしていた。気づいてしまったら終わりだと思っていた。俺は何も知らない。そう自分に言い聞かせて暗示した。

 ゴムの味のする血で我慢し、それで必死に飢えを凌いでその答えから逃げ、有耶無耶にし続けていたら、件の相手に一度も相談できないまま約三年の月日が経っていた。

「は、は……」

 目まぐるしく記憶が巡り、五月女の血の味を思い出し、瞬く間に呼吸が激しくなった。ゲロなのか血液なのか唾液なのか分からない液体が、唇を伝って、五月女の手を伝って、たらたらと落下していく。

 赤眼で俺を見る五月女の指が、徐に引き抜かれた。五月女の指先から繋がる細い糸を自ら断ち切るようにして俯き、口元を拭いながら咳き込む。俺も床も凄惨な状況だった。

 ゲロの味がした。これが、血を飲む度、五月女がいつも感じている味。ゲロの味ではなくゴムの味がすると言った俺の口に指を突っ込み、吐かす。あの時、五月女を噛んで発情させてしまった俺のせいで、どの血液もゲロの味がするようになったから、その味を俺に分からせるための行為。そう思えてならなかった。
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