『執愛婚』~クリーミー系ワンコな部下がアブナイ男に豹変しました


三十歳の誕生日を迎えた朝。
いつもと変わらない景色なのに、少しだけ新境地を迎えた気がする。

寝返りを打った、その時。
ひんやりとした感覚が首元を襲った。

「えっ……?」

昨夜遅くに、電話での誤解を解くために八神くんが自宅にやって来た。
凄く焦った彼が新鮮に映るほど、愛されてるなぁと幸せをかみ締めた。

そのまま彼は私の家に泊ったはず。
彼の腕の中で三十歳を迎えたのをしっかりと覚えている。

けれど、今隣りに彼の姿はない。
その代わりと言っては違うかもしれないが、私の首に綺麗なネックレスがかけられている。
寝ている間につけてくれたようだ。
誕生石のアイオライトがあしらわれている。

時計を見ると七時十分。
きっと彼は出勤準備をするために自宅に帰ったのだろう。

今までも誕生日にジュエリーを貰ったことはあるけれど、そのどれよりも嬉しく堪らない。
三十歳を迎えるのは正直怖かったけれど、彼と迎えるならその不安や恐怖も怖くないと思えた。



「おはようございます。朝のミーティングを始めます…――…」

毎朝のミーティングを仕切るだけなのに、注がれる視線が熱くて体が痺れてしまいそう。
少し離れたところにいる八神くんの視線は、私の胸元に熱く注がれていた。

千堂(せんどう)さん、この企画案なんだけど、もう少しブラッシュアップして貰えるかな?結構いい具合に仕上がってるから、もう少しだけ追い込んで貰いたいんだけど」
「はいっ!」
「来週水曜日に会議にかけるから、それまでにお願いできる?」
「はいっ」
「じゃあ、よろしく」

入社四年目の千堂 直子(なおこ)を励ましつつ、頑張る姿勢を後押しする。

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