『執愛婚』~クリーミー系ワンコな部下がアブナイ男に豹変しました

あの日以来、璃子さんを見る目が少し変わった。
以前にも増して愛おしいというか。
頼りがいがある先輩でなくて、ささやかな夢を持ってる可愛らしい女性なんだと。

この先、どんなに仕事に追われても、いつか彼女の夢を叶えるのは俺であって欲しいと思うようになった。



『今週の土曜日は高校の同窓会があって、璃子さんちに行けないかも』
『別にいいよ~、楽しんでおいで♪』

圭吾から連絡を貰い、渋々参加することにした同窓会。
三年ぶりというのもあるけれど、正直、璃子さんとの時間を天秤にかけたら、同窓会なんてどーでもいい。

璃子さんからの返信に、ほんの少し気落ちする。
“どこでやるの?”や“元カノも来るの?”とか、少しくらいは気にして欲しいなんて、淡い期待をした自分が痛すぎる。

はぁ…。
いつになったら“好き”になって貰えるんだろう?

有言実行のように、会社での璃子さんは本当に公私混同なんて一切せず。
視線が合っても動揺する素振り一つ見せない。
俺はいつだって目で追ってしまうというのに。

「八神くん、悪いんだけど、デザイン修正案お願いして来て貰える?」
「はい、分かりました」

ほらね。
今だって、声のトーン一つ変えずに指示を出して来た。
見限られないように、仕事くらいは完璧にこなしてやる。



「すみません、松雪さん」
「はい。……あ、八神くん、どうした?」

デザイン企画部チーフの松雪さん(璃子の親友)に修正依頼のファイルを差し出す。

「このデザインの修正をお願いしたいんですけど」
「あぁ、はい、了解です」
「いつぐらいまでに仕上がりますか?」
「うーん、今立て込んでるから三日くらい貰える?」
「三日ですね、分かりました。宜しくお願いします」

会釈して踵を返した、その時。

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