『執愛婚』~クリーミー系ワンコな部下がアブナイ男に豹変しました

最悪だ。

璃子さんから、アイツの会社から新規依頼を受けたと聞いた時、地獄絵図を思い出してしまった。
何も知らされてない浅沼部長を責めるわけじゃないが、関わってしまった以上、対処するしかない。

何が何でも璃子さんだけは守りたい。
いや、守らないとならない。
俺が原因で傷つけるようなことだけは絶対にしたくないから。

予想通り、アイツは非常識にも、仕事をだしに璃子さんを攻撃して来た。
まだ言葉で攻めてるうちに策を講じないと。

璃子さんの過去をわざと持ち出し、精神的に追い詰めようとする杏奈。
そんな手は、お見通しなんだよ。

打ち合わせを終わらせ、ミーティングルームを出て、エレベーター待ち。

「すみません、先に下に行ってて下さい」
「え?」
「アイツとちょっと話して来るんで」
「……分かった」
「すぐ行きます」
「……ん」

来たエレベーターに彼女を乗せ、ボタンを押す。
心配そうに視線を向ける璃子さんににこっと笑顔を返して。

ミーティングルームのドアに寄り掛かってる杏奈に歩み寄る。

「結構打たれ強い彼女ね」

嘲笑する顔を蹴り飛ばしたくなる。

「あんなオバサンの何がいいの?たまにはゲテモノ食いも「てめぇ、それ以上口開いたら、マジで牢屋ぶち込むぞっ!」

ダンッ。
杏奈の言葉に被せるように言い返し、ミーティングルームのドアに手をついた。
怒り狂う衝動を必死に堪え、ジャケットの胸ポケットからペンを取り出す。

「ストーカー規制法違反だってのが、まだ理解できねーの?裁判所から接近禁止命令出てるの、忘れたのか?仕事をだしに使うなら、コンプラ問題で法的処置も追加するから」

一連のやり取りを証拠として残す為に、ペン型の録音機を忍ばせておいた。

「彼女にこれ以上何かしたら、黙ってないよ?」

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