若き公爵の子を授かった夫人は、愛する夫のために逃げ出した。 一方公爵様は、妻死亡説が流れようとも諦めません!
 短い春が終わり、これまた短い夏がホーネージュにやってきた。
 とはいえ、一応、夏は夏。海に面したホーネージュでは、海水浴を楽しむことができる。

 夏季休暇に入ったジョンズワートは、妻子を連れて海へ旅行に来ていた。
 貴族や、それに近い有力な人間しか入ることのできない場所を選んだから、カレンやショーンが変な輩に絡まれる心配は少ない。
 海が見える宿もとり、家族三人で楽しむ気満々である。
 まだ完全に父親の交代ができているわけではないため、チェストリーも一緒だ。
 だが、彼はできる限りショーンには近づかないようにするつもりだった。
 今回の旅行で、ショーンをジョンズワートに任せても大丈夫かどうか、判断するつもりなのである。
 大丈夫だと思えたら、一度デュライト邸から離れるつもりだった。



 目の前に広がる大きな大きな水たまりを見て、ショーンは声をあげてはしゃいだ。
 ラントシャフトには海がなかったから、ショーンにとっては初めて見るものなのである。
 できることなら、好きに遊ばせてやりたいが……。海は危ない。
 ショーンの性格的にも、少し目を離すと海へ突っ込んでいきそうなため、ジョンズワートはショーンとしっかり手を繋いでいる。
 もちろん、デュライト家から連れてきた者たちも目を光らせている。
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