若き公爵の子を授かった夫人は、愛する夫のために逃げ出した。 一方公爵様は、妻死亡説が流れようとも諦めません!
 そんなこんなで短い夏が終わりに差し掛かり、これまたやっぱり短い秋を迎えようとしていた。
 ちょうどそのぐらいの時期、チェストリーが長期の休暇をとった。
 ショーンには、仕事だ、出張だ、と説明して。
 出張だと言われても、ショーンはいまいち理解できなかったが。
 チェストリーが長く留守にすることはなんとなくわかったようで、泣きながら彼を見送っていた。

 この夏、血の繋がった父息子の様子を見て、ジョンズワートに任せても大丈夫なのでは、と判断されたのである。
 ただ、ショーンがチェストリーの不在に耐えられなかった場合のことも考え、必要であれば早めに戻ってくることにもなっている。


 呼び戻されたい気持ちと、本当の父子で上手くいって欲しい気持ち。
 その両方を抱きながら、チェストリーはデュライト邸を離れた。
 ……やはり、費用のほとんどはジョンズワート持ちである。
 普通に休暇をとっただけのアーティと違い、チェストリーはいつからいつまで不在になるのか、わからない。
 あらゆることが、ジョンズワートとショーン次第なのだ。


 ちなみに、休暇を得て恋人とともに旅行をしていたアーティは、ジョンズワートと入れ替わるような形でデュライト公爵家に戻ってきており。

「お前また俺に押し付けて……!」

 と頭を抱えていた。
 公爵様が不在となると、その右腕のアーティにしわ寄せがくるのである。
 とはいえ、初めての家族旅行をとめることはしなかった。
 なんだかんだいって、アーティはジョンズワートの味方で、あの家族を応援しているのである。
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