若き公爵の子を授かった夫人は、愛する夫のために逃げ出した。 一方公爵様は、妻死亡説が流れようとも諦めません!
「おかーしゃ! ばあ!」
「わっ! びっくりしたあ」

 母の元へ駆け寄り、落ち葉のお面で驚かせにくる我が子と、それを見てちょっと大げさに驚いて見せる母。
 秋を迎えたホーネージュ。自然豊かな庭を持つデュライト公爵邸は、この時期は庭が落ち葉でいっぱいで。
 片づけても片づけても、きりがないぐらいである。
 使用人たちが愚痴を言うほとであるが、そんなこと、ショーンには関係なく。
 実の父であるジョンズワートが作ってくれたお面を持って、上機嫌にしている。
 ……葉っぱのお面で顔が隠れているため、表情は見えないが。笑い声がするから、きっと、ご満悦なのだろう。

「あのね、わとしゃにつくってもらったの」
「ふふ。そうなの? ワート様は昔から、こういったものを作るのは上手……です……よね……」

 ショーンとともにカレンの目の前まで来ていたジョンズワートへ視線を向ければ。
 彼は、このタイミングを待っていたかのように後ろ手に隠していた葉っぱのお面を取り出し、そっと自分の顔にかぶせた。
 言葉はない。黙って取り出し、黙って己の顔に重ねた。
 3歳の息子と、27歳の旦那が、そろって枯葉のお面をつけている。
 ジョンズワートは上背があるから、その高低差はかなりのもので。
 上を見ても、下を見ても、同じ髪色をした二人が、同じことをしているのだ。
 ジョンズワートがなにも言わないことがまた、カレンのツボに入り。
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