若き公爵の子を授かった夫人は、愛する夫のために逃げ出した。 一方公爵様は、妻死亡説が流れようとも諦めません!
 こうして、この騒動は幕を閉じた。
 アーネスト領に訪れた頃はまだ昼前だったというのに、もう日が落ちかけている。
 時間帯としては夕方に差し掛かるぐらいだが……季節が季節だから、暗くなるのも早い。
 今日は色々あって疲れたのだろう。まだ幼いショーンなんて、父に抱かれて眠っている。
 温かい恰好をして父にくっついているから、眠ってしまっても特に問題はないだろう。
 カレンとジョンズワートは、このままアーネスト家へ向かうことにした。
 この日の夕食は、アーネスト家でとることになっているのである。

 アーネスト家へ向かう道中、夫婦で今日のことについていろいろな話をした。
 楽しかったけど大変だった、外出のときはもっと気を付けよう、でも無事で本当によかった。
 そんなことを話しながらアーネスト邸のすぐ前まで来た頃、ジョンズワートがこう口にした。

「来年も、また三人で来よう」
「ええ。三人で、一緒に」

 色々あったが――今日は、本当に楽しかった。
 来年も三人で一緒に来たら、きっとよい時間を過ごせるだろう。
 二人は同じことを考えて、微笑み合う。
 
「来年も楽しみですね」

 夕日を浴びながら微笑む彼女は、とても綺麗だった。


 
 
 こんなやりとりをした彼らであるが、来年の雪まつりへの参加は見送りとなる。
 次の夏頃、カレンが妊娠していることがわかるのだ。
 身体が弱く身重な彼女を、冬にあまり出歩かせるわけにはいかない。
 だから来年の雪まつりに三人で来ることはできないし、なんなら、家族が増えるため、落ち着いてからも「三人」で来ることはない。
 そのことを、この夫婦はまだ知らない。
< 173 / 210 >

この作品をシェア

pagetop