若き公爵の子を授かった夫人は、愛する夫のために逃げ出した。 一方公爵様は、妻死亡説が流れようとも諦めません!
エピローグ
「父上、今日こそ僕に乗馬を教えてください!」
「まだ10歳だろう? もう少し大きくなってからの方が……」
「同い年でもう乗ってる人もいます!」
「うちはうち、よそはよそだよ。僕はあと何年か先でいいと思う」

 このやりとりも、もう何度目だろう。
 デュライト公爵家の当主・ジョンズワートとその長男・ショーンの攻防。
 はじめの3年は農村で育ったショーンだが、その後の暮らしで公爵家に慣れ、10歳となった今ではジョンズワートを父と呼び、次期公爵としての教育も受けている。
 昔から活発な彼は、父と同じように乗馬をたしなみたくて仕方なく、挑戦させて欲しいと何度も何度も父に頼み込んでいた。
 しかし、ジョンズワートの返事はいつも「まだ早い」「あと何年か待とう」で。
 小型の馬ではあるが、同い年の友人が馬に乗っていることも知っているショーンは納得がいかない様子だ。
 ジョンズワートが息子に乗馬の許可を出さない理由を知るカレンは、そんな夫と息子を見て苦笑している。
 
「あの人、まだ気にしてるのね」

 そう言って困ったように微笑みながら、カレンは自分の腹を撫でた。
 今、カレンのお腹には新しい命が宿っている。
 第一子であるショーンは10歳。再会し、夫婦となってから第二子第三子と産まれていき……今お腹にいるのは、二人の第四子だ。
< 174 / 210 >

この作品をシェア

pagetop