若き公爵の子を授かった夫人は、愛する夫のために逃げ出した。 一方公爵様は、妻死亡説が流れようとも諦めません!
番外編

窓の外のうさぎさん

 これは、ショーンとカレンがホーネージュの冬に慣れる前のお話。



「ショーン、そろそろおうちに帰ろう?」
「や! いや! いーやー!」
「母さんも心配してるよ」
「や! あしょぶの!」

 こんなやりとりを繰り返すこと、数度目。
 今日は、この国の冬としては、比較的天気が落ち着いていた。
 そのためジョンズワートは、ショーンとともに公爵邸の庭で遊んでいた。

 ショーンは活発な子で、よく外で遊びたがるが、この季節はそうもいかない。ショーンが温暖な土地で暮らしてきたとなれば、なおさらだ。
 だからこの日は、ショーンにとって久々の外での遊びで、気になって仕方がない雪に触れることもできた、たまの機会なのである。
 そのせいか、ショーンはまだまだ外で遊ぶといってきかない。
 ジョンズワートだってもっとショーンを遊ばせてやりたいとは思う。けれど、それ以上に、息子の身体を冷やしたくなかった。
 
 温暖な地域で暮らしてきたショーンに、この国の寒さはこたえるはずだ。
 ホーネージュ生まれのカレンだって体調を崩しがちで、冬になってからは外にはあまり出ないようにしている。
 ショーンの身体の丈夫さはジョンズワート譲りのようだが、それでも心配だ。
 まだ幼いショーンは父の気持ちなど知らず、雪をいじって遊んでいた。
 ――ショーンには悪いけど、これ以上はダメだな。もう抱きあげてでも……。
 ジョンズワートがそんなことを考えるのとほぼ同時に、ショーンがくちゅんと可愛らしいくしゃみをしたものだから。

「あーーーーー! やーーーーー! びゃあああああ!」

 ショーンは父に抱えられ、強制的に屋敷に戻された。
 大泣きであった。
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