若き公爵の子を授かった夫人は、愛する夫のために逃げ出した。 一方公爵様は、妻死亡説が流れようとも諦めません!
「おかあしゃ! おかあしゃみてみて! うさぎしゃんまたいる!」
「まあ……! きっと家族なのね」

 あの日の雪うさぎは、室内から見やすいよう、一階の大きな窓の外におかれた。
 最初はショーンに渡された一匹のみだったのだが、徐々に数が増えていき、今では大小5匹が並んでいる。

「かぞく?」
「お父さん、お母さん。この子はお兄ちゃんかしら」
「このこは?」
「一番小さい子は……妹かな?」

 雪うさぎたちにはそれぞれちょっとずつ個性があり、なんとなく関係性まで想像することができる。
 こっそり補修までされていることにカレンは気が付いており、この雪うさぎたちを見ると、あの人ったら、とついつい笑みが漏れてしまう。
 公爵家ともなれば、出入りする人の数も多い。けれどカレンには、こんなことをする人の心当たりなんて、一人しかなかった。

「……あなたのこういうところ、大好きです。ワート様」

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