若き公爵の子を授かった夫人は、愛する夫のために逃げ出した。 一方公爵様は、妻死亡説が流れようとも諦めません!

きみの欠片を抱く日々に、さよならを

 その日、デュライト公爵邸では、夫人の……カレン・アーネスト・デュライトの誕生日パーティーが開かれていた。
 今回は、カレンが公爵邸に戻ってから、初めての誕生日。
 これまでの経緯を考慮し、招待されたのは夫妻と近しい者のみだったが、パーティーそのものは豪華だった。
 なんでも、夫のジョンズワートがずいぶん張り切ったらしい。

 パーティーは夕方には終わり、夜は家族の時間へ。
 大事な日の夜を三人で過ごせるのは、ようやく再会できた彼らへの、周囲の者の配慮があったからだ。



「おかあしゃ、おたんじょーび、おめでとお!」
「誕生日おめでとう、カレン」

 夫婦の部屋――今は家族の、といった方が正しい――にて、ショーン、ジョンズワートの順に、それぞれ小箱を差し出す。
 カレンは二人からのプレゼントを受け取り、ありがとう、と笑顔を見せた。

 ショーンが母に贈ったのは、木の実でできた飾り。
 材料はショーンが公爵邸の庭で集め、ジョンズワートと一緒に置き飾りの形にした。
 ジョンズワートからは、カレンの誕生石をあしらったアクセサリーを。
 夫と息子共同の手作りの品と、公爵家の格式を感じさせる装飾品。
 正反対にも思える2つのプレゼントを同時にもらい、カレンからは笑みが絶えない。
 どちらも心のこもった品だが、カレンには、父子共同制作の置き飾りの方が本命のように感じられた。
 二人揃って「ここを頑張った」「この材料はあそこで見つけた」などなど話してくるものだから、もうおかしくて仕方ない。
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