若き公爵の子を授かった夫人は、愛する夫のために逃げ出した。 一方公爵様は、妻死亡説が流れようとも諦めません!

ショーン7歳 父の日番外編 初めての贈り物

 雪国・ホーネージュには、お母さんの日だけでなく、お父さんの日も存在している。
 3歳のときにデュライト公爵邸にやってきたショーンも、もう7歳。
 父の日を間近に控え、彼は頭を悩ませていた。
 母の日には、毎年欠かさず母のカレンに贈り物をしている。
 しかし、父の日は違った。
 
 生まれてからの数年間、ショーンの父親役を担っていたのは、カレンの従者であるチェストリーだった。
 最初の数年というのは大きいもので、ショーンがジョンズワートを父と認識するには、それなりの時間がかかったものだった。
 そんな経緯があったから、ショーンは実父に贈り物をするタイミングを逃し続けている。
 周りの者も、彼らの事情に配慮し、「父の日はどうするの」とショーンに聞くこともなかった。
 母の日は毎年祝うのに、父の日にはなにもできていないのである。

 7歳ともなれば、交友関係も広がり、他の令息や令嬢から「父の日」の話を聞くことも増えてきた。

「今年は、お父様にハンカチを渡すの」
「俺はまだ悩んでて」
「肩たたき券って知ってる?」

 同年代の者たちのそんな話を聞きつつ、ショーン、やや焦る。
 今までなんにも贈ってないし、今回も用意してない、と。
 しかし今更、どうすればいいのかわからない。
 7歳となり、父のジョンズワートが「偉い人」だと理解し始めたから、なおさらだ。
 贈り物をしたい気持ちはあるが、「公爵家当主」である父に、なにを渡せばいいのかわからない。
 子供の自分が選んだものなど、使ってもらえるのだろうか。そんなふうにも思ってしまう。
 父親譲りの器用さで、ちょっとしたおもちゃや飾りなどを作ることもできるが、父が公爵であることを考えると、どうにも気後れしてしまう。
 だが、とにかく動いてみないことには、なにも始まらない。
 ショーンは、父への贈り物を探しに町へ出ることを決めた。
< 206 / 210 >

この作品をシェア

pagetop