若き公爵の子を授かった夫人は、愛する夫のために逃げ出した。 一方公爵様は、妻死亡説が流れようとも諦めません!
 カレンは、勘違い、思い込み、すれ違いを重ね、妊娠の可能性を隠してジョンズワートから逃げた過去を持つ。
 ジョンズワートにも非はあったが、逃げ出したのはカレンだ。
 父と子の時間を奪ってしまったことを、今も悔いている。
 彼らがこうして「親子」になってくれたことは、カレンにとって本当に嬉しいことで、救いだった。
 今があるのは、ジョンズワートがカレンを探すことを諦めなかったから。
 ショーンのことを愛してくれたから。
 ジョンズワートの頑張りのおかげで、こんなにも幸せな光景を見ることができる。

「……ありがとうございます、ワート様」
「……カレン?」

 愛おしさから、カレンは背伸びをしてジョンズワートの頬にキスを落とす。
 息子の前で、カレンがそういったことをするのは珍しい。
 きょとんとしたジョンズワートだったが、愛情たっぷりにほほ笑む妻を見て、同じ表情を返す。
 ショーンを片腕で支えながら、もう片方の腕ではカレンを抱きしめる。
 やはりショーンからは抗議の声があがったが、ジョンズワートが妻子を放すことはなかった。
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