新そよ風に乗って ⑥ 〜憧憬〜
「急に無理して食べると、まだ胃が驚くから」
「はい」
狡い。高橋さん……。
高橋さんは、いつもそうやってふとした時に私のことを考えてくれてるっていうのが分かっちゃうんだもの。
「どうかしたのか?」
「えっ? あっ……いえ、何でもないです」
無理しないで食べたつもりだったが、殆ど残さず食べてしまい、最後の方は高橋さんが横からお箸を出してきて一緒に食べていた感じだった。
「どうぞ」
ちょうど食べ終わった頃に、マスターが熱いお茶を出してくれた。
お店はマスター1人でやっているのに、どうしてこんなにも気配りが出来るんだろう。タイミングを心得ているというか。
「ご馳走様でした。マスター、美味しかったです」
「ありがとうございます」
高橋さんが湯飲みを持ちながら、マスターにお礼を言っている。
「どうぞ」
「ありがとうございます。ご馳走様でした。とっても美味しかったです」
「ありがとうございます。ごゆっくり」
マスターは、空いた器を持って直ぐに行ってしまったが、その後ろ姿がとても楽しそうに見えた。
「高橋さん。マスターって、本当にこのお仕事が好きなんですね」
「ん? ああ、そうだな」
ちょうどその時、高橋さんの携帯電話が振動する音が聞こえた。
「ちょっと、悪い」
「はい」
高橋さんが携帯を持って入り口の方へと向かったので、お茶を飲みながらお腹がいっぱいになって久しぶりに満足している自分に、我ながら嬉しいと感じながらもやっぱりミサさんのことが心の片隅に引っ掛かっていた。
その時が来たら向き合ってくれると高橋さんは言ってくれたけれど、つまりそれはまだ向き合えないってことを意味する。だから、今はその時を待つしかなくて……。ああ、いけない、いけない。考えないようにしなくちゃ。
どうして、こういう時って人間の嫌な面が出てしまうのかな。頭では納得していても、確証が持てないことへの苛立ちからなのか、不安定な心のストレスを解消したいのか。つい、欲が出て我が儘な気持ちと共に、急いで応えを出そうとしてしまう気持ちが見え隠れしている。
「はい」
狡い。高橋さん……。
高橋さんは、いつもそうやってふとした時に私のことを考えてくれてるっていうのが分かっちゃうんだもの。
「どうかしたのか?」
「えっ? あっ……いえ、何でもないです」
無理しないで食べたつもりだったが、殆ど残さず食べてしまい、最後の方は高橋さんが横からお箸を出してきて一緒に食べていた感じだった。
「どうぞ」
ちょうど食べ終わった頃に、マスターが熱いお茶を出してくれた。
お店はマスター1人でやっているのに、どうしてこんなにも気配りが出来るんだろう。タイミングを心得ているというか。
「ご馳走様でした。マスター、美味しかったです」
「ありがとうございます」
高橋さんが湯飲みを持ちながら、マスターにお礼を言っている。
「どうぞ」
「ありがとうございます。ご馳走様でした。とっても美味しかったです」
「ありがとうございます。ごゆっくり」
マスターは、空いた器を持って直ぐに行ってしまったが、その後ろ姿がとても楽しそうに見えた。
「高橋さん。マスターって、本当にこのお仕事が好きなんですね」
「ん? ああ、そうだな」
ちょうどその時、高橋さんの携帯電話が振動する音が聞こえた。
「ちょっと、悪い」
「はい」
高橋さんが携帯を持って入り口の方へと向かったので、お茶を飲みながらお腹がいっぱいになって久しぶりに満足している自分に、我ながら嬉しいと感じながらもやっぱりミサさんのことが心の片隅に引っ掛かっていた。
その時が来たら向き合ってくれると高橋さんは言ってくれたけれど、つまりそれはまだ向き合えないってことを意味する。だから、今はその時を待つしかなくて……。ああ、いけない、いけない。考えないようにしなくちゃ。
どうして、こういう時って人間の嫌な面が出てしまうのかな。頭では納得していても、確証が持てないことへの苛立ちからなのか、不安定な心のストレスを解消したいのか。つい、欲が出て我が儘な気持ちと共に、急いで応えを出そうとしてしまう気持ちが見え隠れしている。