新そよ風に乗って ⑥ 〜憧憬〜
頭上から体を右に傾けて、明良さんは私の顔を覗き込むようにジロッと横目で睨まれた
「い、いえいえ、そんなことないですよ」
「まっ、いいや。上がって、上がってぇ」
「あっ。はい……お邪魔します」
明良さんに、急かされるようにしてリビングに向かう
「適当に座ってて。今、用意するから」
明良さんがソファーに案内してくれて、言われるままソファーに座ると、着替えを済ませた高橋さんがリビングに戻ってきた。
「明良さぁ……。此処、俺の家。分かってる?」
キッチンに居る明良さんに向かって、高橋さんが念を押している。
「うん。知ってるよぉ。まあ、そう硬いこと言わずにさ」
明良さんは笑いながら、美味しそうな料理をダイニングテーブルに運んできた。
急に1人増えちゃって、何だか悪いことしちゃったな。
うわっ。
でも、料理は半端じゃない量だったので、少しホッとした。
「食べよう。これ熱いうちの方が美味しいから。遠慮しないで食べて」
「はい」
「旨そうだな」
差し出された料理を見ると、四角い白いもの上にいろんな具材がトッピングされている料理だった。
「明良さん。この下の白いのは、何ですか?」
「取り敢えず、乾杯」
「乾杯」
明良さんは、私にビールを注いでくれたが、高橋さんには注がなかった。
「貴博。運転だろ? だから、お預けな」
「チッ……」
「あっ。あの……私、電車で帰りますから。高橋さん。大丈夫ですよ」
そんな私の言葉を無視して、高橋さんは席を立ってキッチンに向かうと、冷蔵庫からウーロン茶を出してきた。
「明良さん。この下の白いのは、何ですか?」
「これ、豆腐だよ」
「えぇっ? お豆腐なんですか? でも……そう言われてみれば」
言われてみると、お豆腐のような感じだ。
「食べてみて」
「はい」
お箸でひと口大に切って、食べてみる。
「美味しい! 私、こういうお料理大好きなんです。どうやって作るんですか? 教えて下さい」
「簡単だよ」
明良さんはあっさり言ったけれど、本当に簡単なんだろうか?
「そうなんですか? 出来るかな? 私にも」
「本当に、簡単なんだよ。まず、豆腐の水を切るんだけど、面倒臭いからキッチンペーパー巻いて電子レンジでやっちゃう。それから豆腐を半分の薄さに横に切って、その上にケチャップを塗ってからいろいろトッピングをするだけ。今日は、ピーマンを薄く切ったのとジャコと、こっちのケフタに使った挽肉の残りをのせて、その上にチーズをパラッと掛けて、あとはオーブントースターで焼くだけ。チーズがとろけてきたら取り出して、仕上げに鰹節をふりかけて出来上がり。早い話、和風豆腐ピザみたいなものかな?」
明良さんは、説明しながらケフタと呼ばれるものを食べている。
「そうなんですか。簡単そうですね。今度、作ってみます。でも……明良さん。ケフタって、何ですか?」
本当に、何も知らない私。
情けないな。
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