新そよ風に乗って ⑥ 〜憧憬〜
「フッ……いい返事だ」
ちょうどエレベーターの扉が開いたので、高橋さんが私を先に下ろしてくれるとそう言った。
そして、高橋さんが言っていた通り、私の想像を遥かに超える忙しさの怒濤の決算期の月末週を終え、待ちに待った週末になった。
高橋さんの家の最寄り駅で待っていると、駅まで高橋さんが迎えに来てくれた。
「悪いな。家まで迎えに行きたかったんだが、ちょっと朝一番で用事があって行かれなくて」
「とんでもないです。わざわざ、駅まで迎えに来て下さってすみません。ありがとうございます」
そうだ!
今日こそ、まゆみに教わったオーラを出しまくる方法を実践しなくちゃ。でも、出来るかなぁ……。
マンションに到着し、高橋さんが車を駐車場に入れている間、エントランスで待ちながらガラスに映った自分を見ながらまゆみに教わったポーズの練習をしていた。
「お待たせ」
うわっ。
「誰か居たのか?」
「えっ? い、いえ。誰も」
「そう。ガラス越しに手を振ってたから、明良か仁が来たのかと思った」
うっ。
し、しまった!
み、見られてた。高橋さんに。
でも、それ以上は聞かれなかったので、エレベーターに乗って高橋さんの部屋まで行く間、話を逸らせようと必死になっていた。
「明良さん達は、何時頃いらっしゃるんですか?」
「ん? 12時頃来るって、さっき言わなかったか?」
「あっ。そ、そうでしたね。すみません。すっかり忘れちゃってて、アハハ……」
「お前。何、企んでる?」
うわっ!
ち、近いです。近過ぎですってば、高橋さん。
高橋さんが部屋のピロティのドアを開けた途端、いきなり振り返って私の顔を覗き込んだ。
「い、いえ。い、いいえ。何も……ヒッ……」
「なーんか、怪しいな」
高橋さんは私の顔を覗き込みながらそう言うと、疑いの眼差しを向けながら鍵を開けた。
「あがって」
「はい。お邪魔します」
ふぅ。危なかったぁ。バレるかと思った。
「座ってて」
エッ……。
「あの、何かお手伝い出来ることは……」
「もう直ぐ、煩いのが来るから。それまで静寂な空気を味わっておいた方がいいぞ」
ジャケットを脱ぎながら自分の部屋に入ろうとしていた高橋さんが、ドアノブを掴んで背中を反らせながらそう言うと、部屋の中に消えていった。
煩いのって……多分、明良さんのことだ。
明良さんや仁さんに会うのも久しぶりだから、ちょっぴり緊張しちゃう。でも、それよりもこのリビングに1人で居ることの方が、今は何だか緊張する。妙な静けさに落ち着かない。高橋さん。早く戻って来ないかなぁ。早く、お部屋から出て来て欲しい。
ピンポーン。
うわっ。
ちょうどエレベーターの扉が開いたので、高橋さんが私を先に下ろしてくれるとそう言った。
そして、高橋さんが言っていた通り、私の想像を遥かに超える忙しさの怒濤の決算期の月末週を終え、待ちに待った週末になった。
高橋さんの家の最寄り駅で待っていると、駅まで高橋さんが迎えに来てくれた。
「悪いな。家まで迎えに行きたかったんだが、ちょっと朝一番で用事があって行かれなくて」
「とんでもないです。わざわざ、駅まで迎えに来て下さってすみません。ありがとうございます」
そうだ!
今日こそ、まゆみに教わったオーラを出しまくる方法を実践しなくちゃ。でも、出来るかなぁ……。
マンションに到着し、高橋さんが車を駐車場に入れている間、エントランスで待ちながらガラスに映った自分を見ながらまゆみに教わったポーズの練習をしていた。
「お待たせ」
うわっ。
「誰か居たのか?」
「えっ? い、いえ。誰も」
「そう。ガラス越しに手を振ってたから、明良か仁が来たのかと思った」
うっ。
し、しまった!
み、見られてた。高橋さんに。
でも、それ以上は聞かれなかったので、エレベーターに乗って高橋さんの部屋まで行く間、話を逸らせようと必死になっていた。
「明良さん達は、何時頃いらっしゃるんですか?」
「ん? 12時頃来るって、さっき言わなかったか?」
「あっ。そ、そうでしたね。すみません。すっかり忘れちゃってて、アハハ……」
「お前。何、企んでる?」
うわっ!
ち、近いです。近過ぎですってば、高橋さん。
高橋さんが部屋のピロティのドアを開けた途端、いきなり振り返って私の顔を覗き込んだ。
「い、いえ。い、いいえ。何も……ヒッ……」
「なーんか、怪しいな」
高橋さんは私の顔を覗き込みながらそう言うと、疑いの眼差しを向けながら鍵を開けた。
「あがって」
「はい。お邪魔します」
ふぅ。危なかったぁ。バレるかと思った。
「座ってて」
エッ……。
「あの、何かお手伝い出来ることは……」
「もう直ぐ、煩いのが来るから。それまで静寂な空気を味わっておいた方がいいぞ」
ジャケットを脱ぎながら自分の部屋に入ろうとしていた高橋さんが、ドアノブを掴んで背中を反らせながらそう言うと、部屋の中に消えていった。
煩いのって……多分、明良さんのことだ。
明良さんや仁さんに会うのも久しぶりだから、ちょっぴり緊張しちゃう。でも、それよりもこのリビングに1人で居ることの方が、今は何だか緊張する。妙な静けさに落ち着かない。高橋さん。早く戻って来ないかなぁ。早く、お部屋から出て来て欲しい。
ピンポーン。
うわっ。