新そよ風に乗って ⑥ 〜憧憬〜
「ふーん。そう。それじゃ、諦めればいいじゃん」
まゆみ。
あっさりまゆみが聞き入れてくれたので、少し面食らってしまった。
「でもさ、そんなことは初めから分かりきってたことなんじゃないの? 過去に付き合ってた彼女とのことを引きずってるけど、それでもハイブリッジが好きだって言ったのは陽子じゃない。それを承知で、ハイブリッジを好きになったんじゃないの? それでもいいと思ったのは、陽子じゃないの? 昔の彼女のことを忘れられるまで、待ってるんじゃなかったの?」
「まゆみ……」
「あれだけ出来る男が、昔のたった1人の女のせいでボロボロになって、それを引きずってまともな恋愛が出来なくなった。だけど、今までそれでもいいと言ってくれた女は山ほど居たのかも知れない。でも、心を開けずに居た。そのハイブリッジが、やっと陽子に心を開きかけているこの時に、やっぱり辛いから無理って陽子に言われるハイブリッジの気持ち、少しでも考えてみた?」
高橋さんの気持ち?
「ハイブリッジの肩を持つわけじゃないけど、陽子なんかよりずっと辛いんじゃない? 苦しいんじゃない? 気持ちを切り替えて前に進もうとしているハイブリッジに、前に進めないから諦めるなんて言われたら……。私だったら、耐えられない。自分が前に進もうとしている時に、その自分のせいで前に進めないなんて言われたら、地獄に突き落とされたようなものよ。まあ、諦めるんだったら、ハイブリッジが立ち直れなくてもどうなろうと、陽子には関係ないことだろうけど?」
「そんな……そんな、私は……」
「だって、そうじゃない。もし、そんな風に言われたら、男だって女だって否定は出来ないし受け容れるしかないじゃない。楽しいことだってあったはずなのに、前に進みかけた途端、前に進めないから付いて行かれないなんてさ。それ、陽子はハイブリッジのこと、都合のいい男として利用していたとしか見られないわ」
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