婚約破棄寸前の不遇令嬢はスパイとなって隣国に行く〜いつのまにか王太子殿下に愛されていました〜

2 それだけが取り柄

 ゴトゴトと馬車は静かにわたしを運んで行く。

 わたしはあれから早速隣国へ向かう準備を整えた。
 アンドレイ様からは「戦争計画の情報は自分とごく近い側近しか知らないので、名目上は王妃になった際の外交の勉強のために隣国の大使館に勤めるようにした」と言われた。これにはお父様も大賛成で「殿下がそうおっしゃるのだから、しっかり勉強をしてきなさい」と送り出された。

 わたしは生まれたときからアンドレイ様の婚約者で、幼い頃から未来の王妃になるための教育を受けてきた。両親からは「お前は未来の王妃なのだからしっかりしなさい」と、何度言い聞かされてきたことだろう。
 だから、わたしは未来の王妃――国中の淑女の手本になるために毎日研鑽を積んできた。
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