婚約破棄寸前の不遇令嬢はスパイとなって隣国に行く〜いつのまにか王太子殿下に愛されていました〜
「オディール嬢の警備の強化を。絶対に暴漢に襲われるような事態に陥らないように。我が国でそのような惨事が起こったら、国際問題に発展するかもしれないからな。……それと、王子の周辺の調査も引き続き怠りなく頼む。同時にあちらさんの戦備の進捗状況も調べろ」
「御意」
「僕も彼女を観察に行ってくる。今は軍隊にいるんだってな」
「おい」
フランソワは立ち上がろうとする親友の肩を掴んで、強引に座らせた。
「なにするんだよ」と、レイモンドは口を尖らせる。
「お前は王太子の仕事をしろ!」
「友人が一人で頑張っているんだ。友として力になりたいだろ」
「友人の前に、お前は王太子だ。権力者として責任を果たせ」
「今日の分はもう終わった」
「はぁっ!?」
フランソワが目を剥いて書類を確認すると、本当に本日分の仕事は見事に終わらせていた。
「じゃ、そういうことで」
レイモンドはいつの間にか部屋の扉の向こうからヒラヒラと手を振っていた。
「お、おい――」
フランソワが止める間もなく、彼は去って行った。