婚約破棄寸前の不遇令嬢はスパイとなって隣国に行く〜いつのまにか王太子殿下に愛されていました〜


「そこ! 無駄話をするな!」

 監視の怒声を合図に、わたしたちは仕事に戻って再び黙々と穴を掘る。

 ま、そうなるわよね。見ず知らずの初対面の人間に本当のことを話すわけはないか。
 だとしたら、こちらも彼の茶番に付き合うことにするわ。わざわざ彼の本当の身分のことを指摘して、厄介な問題に巻き込まれでもしたら面倒だしね。

 ……スカイヨン先生からも好奇心で事件に首を突っ込むなって、きつく言われているし。


「ここの仕事はどうだ?」と、レイが出し抜けに小声で尋ねてきた。

「えっ? あ、あぁ、思ったより過ごしやすいよ。来る前はどんな地獄が待ち受けているかと戦々恐々としていたから」

 わたしは監視に怒られないように今度は手を止めずに答える。

 彼は目を丸くして、

「悪い噂しか聞かなかったということか?」
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