麻衣ロード、そのイカレた軌跡⓽最終話/魂の交尾
ファーストレジェンド~また猛る季節まで/その12
真樹子



「…じゃあ、三田村さんのアンテナにも紅丸結婚引退はキャッチされてるんですね?」

「ああ。まず間違いないよ。片桐ジュンにもカマかけてみたらどうよ」

「あの人は立場的にいろいろあるでしょうから。もう少し先にしますよ」

「ふふ…、なかなかいい目効きだね。ちょっと今の時期で知られてたってなると、カンぐられるからねー。まずいわよね、マキにとっては。ヒヒ…」

三田村さんはこれを境に、私と砂垣さんの濃密加減をことあるごとに推し量るような”探り”をいれてきてね

まあ、この人にとって、それは二通りの意味があることに私は気づいていたが…

...


春が近づく頃になると、巷にも紅丸結婚引退の噂が流れ始めたわ

すると砂垣さんは、待ってましたとばかりに表立ったアクションに出たわ

愚連隊をかませた数グループと私の息がかかった女のチームを前面に出し、南玉連合へのあからさまな挑発行為をしかけていったのよ

これは紅丸が紅組を離脱した時、排赤を掲げた然るべき行動を想定した際の、いわば伏線と都県境全体に向けたシグナルを兼ねていた

「…界隈の反応はこっちにも伝わってはきているけど、実際はどうなのかな。もうセーブしたほうがいいかしら」

「いや。このくらいでちょうどいい。愚連隊の方が控えめってのがミソさ。お前の影が見える女どもがよう、南玉連合の目に入るところでブイブイとバイクを走らせりゃ、南玉も組織内のチーム設立を唱える論調は嫌でも高まるからな。フフフ…、何しろ南玉を揺さぶって、急進派と守旧派の内部対立を煽るんだ」

「うん。連中が公認チームを発足させるには、2年前の協定があるから紅組の承認が必要ですものね。そこで紅組の去就が読めるわね」

「そう言うことだ。紅組が紅丸の抜けた後をどう持っていくかで、再編の方向性が変わってくるからよう。それによっては、墨東会の関与度合いを調整する必要があるしな」

この戦略は結果的に極めて効果を上げ、私たちの狙い通りの局面を導き出すことができるんだけどね…

でもね…

...


「フン、どうせなら全面的なフレーム再編劇に持っていきたいわ。その場合、星流会は本気でおっぺしてくれる意向だしな」

砂垣さんはそう言って目を輝かせていたわ

2年前の屈辱的なパージを紅組から受け、ひたすらリベンジの時を待ち望んでいたから、この人…

でも私個人としては、星流会には一線を超えさせないで欲しいという気持ちが強かったのよね

やっぱりさ…

私は彼に、折りに触れて自分の正直な気持ちと願いをさりげなく口にしたけど、砂垣さんはいつも「お前の気持ちは無碍にしないさ」と優しい顔で頷いてたわ

でも結局は聞き流していたし、私はそれをはっきり感じ取っていたわよ

今から思えば、この辺りから私たちのパートナーシップは所詮張りぼてだったと、なんとなくは気づいていたのかもね

その同床異夢は、麻衣さんと出会う直前にさらけだされる訳だ…





< 12 / 52 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop