麻衣ロード、そのイカレた軌跡⓽最終話/魂の交尾
迷宮へ…/その20
剣崎


しばらくの間があった…

相馬会長の顔から視線を離さなかった田代さんは、横に付く幹部に軽く会釈すると今度は俺の方を向いて口を開いた

「…剣崎君も本家付きで多忙だろうに、ご苦労だな。まあ、すでに君以外でもよう、撲殺くんあたりが女子高生の世話係とかって噂も耳にしてるが…。はは…、相馬さん、さすが極道界の常識をことごとく覆してきた相和会だ。これは私だけで留めておくにはもったいない話ですな。当然聞き流す”レベル”のモンじゃないと理解しましたよ。しっかりと、みんなにも”教えて”やらないと…」

「では、よろしくと申しておきましょう、田代さん…」

「ええ。まあ、さっきの話に戻るが、ここまで業界の誰もがやらないことをに踏みこんできた相馬さんだ。あなたが健在なうちにも、ガキ市場の確立と運用スキーム構築にも、きっと独自で参画を図られるでしょうな。いや‥、むしろそれは、あえて後継へのチャレンジとされるかな。はは…、まあ、今日は色々”情報交換”できてよかった」

「田代さん、こっちも有意義なお話ができて感謝している。ぜひ、”みんな”にも良しなにどうぞ」

午後11時半前…

会合はここでお開きとなったが…


...


「…フン、田代のヤロウ、”2度目”は俺がくたばる寸前を突いてくるってのが関東本家の方針だってよう、顔に書いてあったわ。要は、ヤツが今夜俺と会って、その時期をどこに定めるか本家に持ち帰って大まかな青写真を描くハラだ。俺の見立てじゃ、1年から2年の間のスケジュール感ってとこだろうよ。矢島にはお前からこのことを話しておけ。お前の言葉でな。建田には俺から告げる。俺の言葉でな…」

「わかりました…」

相馬さんは基本、自分の死後、跡目が誰という気持ちはない

一言でいえば、相和会がなくなっても、関東か関西に飲み込まれても構わないとさえ考えてる

ただ、自分の目が黒いうちは広域暴○団に”なる”気がないだけ

それだけだなんだ

だが…、場合によっては、生前で会長を引退して後は勝手にやれってのもあり得るかもしれない

この人のことだ

所詮は何でもありだしな

しかし、今日の利害関係どっぷりの対外組織に向けた生々しい発言の数々を察するに、この人の”残された時間”を麻衣とケイコへ関与していくことに費やす気持ちなのは間違いないようだ

あの妖しいクスリと併せて…

...


そして会長の視界の向こう側は概ね1年後だ

”あの二人”を南玉連合という枠内でぶつけ合わそうとした底意には、この都県境のガキ事情に何らかの変事が生じた局面の中心に、あの子らがワープしてしまうような下地が培われるであろうと見越してるんだ

もはや、この俺の解釈には確信を伴っていたよ

そうなれば…

この俺は、麻衣はともかく、横田競子をもそんな途方もない”場所”へと続く道を歩ませることになるのか…

それは明日の夜が、事実上の出発日となるんだ…

おそらく当面は二人の間で、かく激しい日々となる

だが、熱く疾走するあいつらを取り囲む環境そのものは比較的静かなものなのだろう

しばらくはな

ケイコ…、それに麻衣…

そうさ…

俺には、この二人の子がこれから辿る過程から目を背けることなど許されないんだ

絶対に…

永遠に





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