麻衣ロード、そのイカレた軌跡⓽最終話/魂の交尾
エピローグという名のプロローグ/その1
妖しいケムリ



週末土曜日の夕方…

ケイコに”提供”されたアパートの床には二人の少女があおむけで、しばらく黙って天井を見つめていた

頭を寄せ合い、両足は逆に離れて、真上から見るとちょうどVの字で二人は寝転んでいる態勢だった

そして部屋は妖しいケムリの中にあったのだ

”それ”は、二人の体と精神を念入りに撫でている…

そこの空間はそんな様相を呈していた

あぶりが”初体験”だったケイコは、既に気分がハイになっていたが、一方の麻衣はようやくイイ気分…、といった段階だったようだ


...


「…なあ、私たち、確か女子高生だよな…」

「ああ、確かに花も恥じらう女子高生だ。モノホンだ。キャハハハ…」

「でもさあ、フツーじゃないだろ、こんなの…」

「そうだな。フツーの女子高生はよう、”ああ、おはよう~””昨日のTV観たー?””うん、観た~、面白かったよね~”とかってね…。テレビと彼氏の話でキャンキャンだ。フン、アホくさ!あっ、痛てえ…」

麻衣はまだ包帯の中にある左手の骨折した小指の先を、つい、床につっかけてしまった

思わず眉間にシワを寄せ、右手で包帯の上から小指を摩る麻衣…

「おい、大丈夫か?痛むのか、指…」

その麻衣の右側に寝転んでいたケイコは心配そうに首を左に向け、麻衣の顔を覗き込むように声をかけた

「こんなもん!それよか、お前にやられたパイプの方が強烈だったって。そん時の頭からは包帯も取れたけど、あの痛みは忘れられないよ。骨と心の奥底にズシリときたし。はは…」

「…」

ケイコはあの夜、火の玉川原で麻衣の頭を殴りつけたあたりを見つめていた

そして、その場所周辺にそっと右手を伸ばした

それはどことなく無意識っぽい手の動きだったが…


...


「もう少し下かな…。ああ、丁度そこだ。タンコブんなってるだろう…、まだ」

「うん…。そうだね」

ハイな気分を自覚しながらも、麻衣とは反対にこの時のケイコはすっかりしんみりした口調になっていた

それはケイコ自身、”何で気分がテンバっちゃってるのに、こうもしんみりモードなんだろう。不思議な感覚だ…”と、自分の心の中で盛んにつぶやいていたくらいだったから…

ケイコは半ば朦朧としながらも、ただひたすら麻衣の頭を髪の毛の上からさすり続ける…

やさしく撫でるように、彼女の手はゆっくりその動作を機械のように繰り返す

麻衣は黙って、天井一点にその鋭い目を停止させていた

”殺すつもりで戦ったヤツなんだよ、コイツは…。憎んでるし許せない、今も…。それなのに…”

ケイコは無言で自問自答しながら、やがて、その手は麻衣の首すじまで降りて行った

そこでも同じ作業が同じくらいのスピードで何度か繰り返され、さらに下へと…





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