再会したクールな警察官僚に燃え滾る独占欲で溺愛保護されています
「ごめん、電話だ」
次はどのお店を見ようかと商業施設内を歩いていると、加賀美さんの方からスマートフォンの着信音が聞こえた。
取り出して画面を確認してから「ちょっと話してきてもいい?」と加賀美さんが申し訳なさそうに言った。
「仕事の電話ですか?」
「そう。すぐに終わると思うからちょっと待ってて」
繋いでいた私の手をするりと離して加賀美さんが走っていく。
彼の背中が人混みの中に消えていった。
仕方ないので近くにある休憩用のベンチに腰を下ろす。
すぐに終わると言っていたのにしばらく経っても加賀美さんが戻ってこないので、スマートフォンをいじりながら待つことにした。
そのとき、買い物客で賑わう商業施設内に女性の悲鳴のような声が響く。
「ど、泥棒! 誰か掴まえてっ」
泥棒⁉
スマートフォンから顔を上げて悲鳴の聞こえた方を見ると、こちらに向かって走ってくる黒色の服装の男が見えた。
その後ろには尻餅をついて転んでいる六十代ぐらいの女性の姿が見える。
黒色の服装の男の手にはハンドバッグが握られていて、おそらく女性から奪ったものだろう。
「邪魔だ、退け」
男は自分の走る方向にいる買い物客たちを押し飛ばしながらものすごい勢いでこちらに向かって走ってくる。
どうしよう。たぶん私の前を通り過ぎていくはず……。