再会したクールな警察官僚に燃え滾る独占欲で溺愛保護されています
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どうしよう、吐きそうだ。
英介さんが運転する車の助手席に座りながら、少しだけ開いている窓から入る風を浴びて気分を落ち着かせる。
「大丈夫?」
ハンドルを握る彼がちらっと私に視線を向けた。
「大丈夫じゃないかも」
「それじゃあいったんどこかに停まろうか」
心配そうに声をかけてくる英介さん。つわりによる吐き気だと思っているのだろう。でも今のはそうではなくて。
「あとどのくらいで着きそう?」
弱々しい声で尋ねると「もう少し」と英介さんが返してくれる。
「我慢できそう?」
「うん」
頷いた私を見て英介さんが軽く微笑んだ。
もう少しで着いちゃうんだ。そう思うとさらに気持ちが悪くなってくる。
これはつわりによるものではなくて、極度の緊張からくる吐き気。
私たちは今、都内にある英介さんの実家に向かっている。
私の父に結婚の報告をした翌週の今日は彼の家族に挨拶をする予定だ。
初めて会うのだけれど、緊張している理由はそれじゃない。人見知りというわけでもなく初対面の人ともわりと話せる性格だけど、英介さんのお父様の前でも普段通りでいられるだろうか。
『今年新しく警視総監に就任したのは加賀美くんのお父さんだろ」
以前、病室で聞いた父の言葉が脳裏に過る。
英介さんのご両親に挨拶へ行くと決まった日から私の頭の中はずっとそれだけを考えていた。
いったいどんな方なのだろう。