再会したクールな警察官僚に燃え滾る独占欲で溺愛保護されています
「すみません、用事があるので」
くるんと背中を向けた。
走りそうになったけれど、お腹に赤ちゃんがいるので足早に歩く。
「待ってください」
男性が私を引き止める声が聞こえたけれど振り返らず、横断歩道を渡る人波に溶け込むようにして進む。
背後から男性の声で「待って」「少しでいいから」というのが聞こえるけれど、聞こえないふりをした。
ちらっと振り返ると、男性は人波に行く手を遮られている。あの様子だと今すぐに私を追いかけるのは無理だ。
今のうちに逃げないと。
人通りの多い表通りを進んでいく。
最近はなにも起こらなかったから油断していた。あとをつけられたのはあの一度だけだったのに、どうして今になってあのときの男性が現れて声をかけてきたのだろう。
不安と恐怖でばくばくと脈が速くなる。
しばらく歩いたところでいったん立ち止まり後ろを振り返った。けれど男性の姿はない。私の姿を見失ったのだろうか。
とりあえずマンションに帰ろう。それから英介さんに電話をして……。
これからどうすればいいのかを冷静に考えながら歩き続ける。
駅から離れるにつれて表通りを歩く人の数も減ってきた。
すると、そのとき――。
「……っ」
ふと背後に違和感を覚えた。
誰かに見られているような視線を感じた気がして、素早く後ろを振り返る。