再会したクールな警察官僚に燃え滾る独占欲で溺愛保護されています
「掴まえた」
「きゃー‼」
叫んでみたところで周囲に人はいないので誰も助けてはくれない。私はこれからどうなるんだろう。
諦めの気持ちが強くなるが、こんなところで大人しく掴まるわけにはいかない。なんとかして逃げないと。まだなにか手があるはずだ。
掴まれていない方の手で肩にかけているトートバッグの持ち手を掴んだ。それを男の人目掛けて思い切り振り回す。
「手を離してください」
「痛っ、痛いって」
振り回しているバッグが男の人の腕や体にあたり、私を掴んでいた手の力が緩まる。
今だ……!
その隙に逃げようとしたものの、あっという間に手首を掴まれて引き戻されてしまった。
「は、離して」
「だから俺だって」
「誰ですか。どうして私のあとをつけるんですか。警察呼びますよ」
「いやそれ困る」
バッグからスマートフォンを取り出そうとした手を掴まれた。そのときようやく男の人の顔がはっきりと見えて「……あ」と私の口から声が漏れた。
「えっと、加賀美さんと同じ職場の……」
確か、及川さんだっけ。
「やっと気付いてくれたかー。通報されなくてよかった」
ほっとしたような表情を浮かべる及川さん。
「うしろからいきなり声かけてごめん。そりゃ驚くよね。俺が悪かったです」
すっと腰を折って及川さんは頭を下げた。