【コミカライズ連載中】➕SS 雲隠れ王女は冷酷皇太子の腕の中〜あなたに溺愛されても困ります!
「あの……そのっ……。この子の瞳の色が、あなたと同じ薄いブルーだからですっ」
ジルベルトは形の良い眉をひそめて心持ち首を傾げる。
「……それだけ?」
「それだけです!」
恥ずかしさで、マリアはもじもじとする。
「なんだ、そうなのか……」
マリアにいったいどんな答えを期待していたのだろう? ジルベルトはどこか不満そうに、抱き上げた仔猫と鼻を寄せあっている。
本当は、仔猫の目の色が似ていただけではない。外見も性格もジルベルトに似た仔猫を、もう会えないかも知れないと思うジルベルトに重ね、ジルベルトの面影に想いを馳せていたのだから。
そわそわと落ち着かないマリアの様子を心配でもしたのか、ジルベルトの手の中の仔猫が「にゃー」と小声で鳴いた。
「俺は……嬉しい驚きだったよ。猫の名付けの事もだが、ジルベルトという名を、君が覚えていてくれたのだと」
マリアは赤くなった頬を隠すようにうつむいた。
「当たり前です。忘れるはずが、ありません……」
思わず口を突いて出てしまった本音に、どきりとする。
は! と見遣れば、案の定ジルベルトが仔猫の被毛の向こうで青い目を丸くしている。仔猫も同じように青い目を丸くしていた。