【コミカライズ連載中】➕SS 雲隠れ王女は冷酷皇太子の腕の中〜あなたに溺愛されても困ります!
湯殿脇に吊られたカーテンからひょんと顔を覗かせたのは、背高い一人の女性。
白と黒のいわゆるメイド服に身を包み、ブルーヴァイオレッドの髪をメイドキャップの中に仕舞いこんでいる——マリアと同じくらいの年齢の若いメイドだ。
「……マリア様ですね? お湯浴み中、失礼いたします」
虚を突かれたマリアが湯船の中でわたわたしていると。
カーテン脇の小卓に着替えを置いたそのメイドが、湯殿で目を丸くするマリアをちらりと見つめる。
「ジルベルト様のお好みのタイプ。想像とはちょと違ったけれど、お顔立ちの愛らしい方ではありますね」
「……?!」
女性同士だといえども初対面なのだ。突然の侵入者に、マリアは湯船の中で胸元を掻き抱く。
「わたくし、フェリクス公爵様よりマリア様の専属メイドを命じられました《《ラムダ》》と申します。あぁ、マリア様は、フェリクス公爵様とはまだ面識がありませんでしたね。お湯浴み中に驚かせてしまいましたが、そんなに戸惑われなくても大丈夫です。このわたくしが、マリア様のお身体を磨き上げるのに精一杯お手伝いさせていただきますので」
精一杯、と言う割には。
ラムダと名乗るメイドは見るからに疲労ぎみで、猫背がかった背中、目の下にはうっすらとクマを覗かせる。