【コミカライズ連載中】➕SS 雲隠れ王女は冷酷皇太子の腕の中〜あなたに溺愛されても困ります!
「あの、マリア『様』は、やめていただきたいです。私もここで働かせていただくつもりですから……」
——働くって言っても、お仕事とは言えないほどの内容ですが…っ。
「それに私、お付きの方をわざわざ寄越していただくような者ではありません。昼間に時間があるのなら、どんなことでもしますから、できれば働かせていただきたいのですが……」
「いいえ、そのようなわけには参りません。ジルベルト様は、極力あなた様を皇城内で人の目につかせぬようにと仰いました。その命に従うならば、宮での労働などとんでもない事でございます。それに。あなた様はジルベルト様が目をかけておられる大切な御方。わたくしはこのまま、マリア様、と呼ばせていただきます」
ラムダは淡々と告げるが、マリアはたじたじとなる。
床に足を取られるほどに疲れているようだが、ラムダが時折見せる凛とした眼光からは彼女の意志の強さが窺える。
「では、髪は、わたくしが。ふれてもよろしいでしょうか?」
湯殿に一歩近づくラムダは先ほどまでのぼやんとした表情に変わり、マリアを労わるような、穏やかなほほえみを浮かべている。