【コミカライズ連載中】➕SS 雲隠れ王女は冷酷皇太子の腕の中〜あなたに溺愛されても困ります!
「は……い」
とうとう観念をして湯船に浸かるマリアの髪に、ラムダは櫛でゆっくりと、薔薇の香りを付けた香油を馴染ませた。
「とても綺麗ですね。マリア様のこの髪色、初めて拝見いたしました。深みがあって……繊細なお色。高価な絵の具を使ってでも、なかなか表現のできない色味ですわ」
「絵の具……。ラムダさんは、絵画に興味があるのですか?」
「時間を見つけて時々描きます」
「絵が描けるなんて羨ましいわ。私の絵は子供じみた落書きだから」
マリアは頬の緊張を緩め、くしゃり、と無邪気な笑顔を浮かべてみせた。浮き出した鎖骨に、抜けるような白い肌を彩るストロベリーブロンドの塗れ髪が落ちかかる。
「マリア様はとても華奢でいらっしゃいますが、もう少しふっくらされれば本来の美貌を取り戻されます。わたくしには、わかります。いつかマリア様の絵姿を、このわたくしに書かせてくださいませんか?」
「そんな、私なんて、絵のモデルにはなれません。いくらラムダさんの絵が上手でも、私がモデルではきっと貧相な絵になってしまうわ……」
「ですから、今は。しっかりとお食事を召し上がってくださいませ。まずは滋養を付けるところから始めましょう。マリア様は本来、人を魅了する容姿をお持ちのはずです。そして素晴らしいモデルになる素質も……!」
「恥ずかしいです、私……本当に、そんな風に言っていただけるほどの者では……」
「少しふっくらとされれば、ジルベルト様もお喜びになるのでは?」
「……ぇ……?」