【コミカライズ連載中】➕SS 雲隠れ王女は冷酷皇太子の腕の中〜あなたに溺愛されても困ります!

 ——ジルベルトの瞳は不思議な色。氷のように冷たく見えたり、光が差し込む海のように優しく見えたり。

 清潔なシャツ一枚を羽織り、ブレーを履いただけの格好は湯浴み上がりなのだろう。濡れ髪を拭いてざっと整えただけの無造作な様相も、マリアの初心な乙女心をざわつかせた。

 ——こんなに綺麗なんだもの……女性にモテるでしょうね?

「見違えたな。まるで別人だ」

 形の良い唇から唐突に発せられた言葉に、はっと我に返る。

「……ぇ」
「さて、これで良し。万能に効く薬だ、明日には治っているだろう」

 きちんと包帯が巻かれたマリアの指先がようやく解放される。

「すっ、すみません、私ったらぼうっとしちゃって……全部お任せしてしまって……! 自分でも出来ましたのに。それに、お、お茶はっ……?! 私、お茶を淹れ直さなくちゃ……!」

 わたわた取り乱すマリアを見て、ジルベルトは青い目を細めてくつりと微笑(わら)う。

「お茶はもう良い。代わりに晩酌に付き合ってもらおうか?」
「へ……」

 ジルベルトはすっとソファを立上がり、マホガニーのキャビネットを開く。グラスを二客と酒瓶を一本——見るからに高価そうなエチケットが貼られている——とを取り出して、小卓に並べた。

「お、お酒?!」
「苦手なら無理に飲まなくていい。水を持って来よう」
「お水なら、私が……っ」
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