【コミカライズ連載中】➕SS 雲隠れ王女は冷酷皇太子の腕の中〜あなたに溺愛されても困ります!

 面と向かってみれば、化粧を施してもいないのにほんのり紅く頬を上気させた白い肌や、薔薇の花弁のような唇や——長い睫毛で縁取られたアーモンド型の、アメジストの瞳に光を宿した顔立ちは中々に愛らしい。

 腰まである長い髪を下ろし夜着の上に薄いガウンを羽織っただけのマリアだが、その佇まいは美しかった。髪結いをして着飾れば、豪華なドレスでさえ恥じらうだろう。

 メイド二人は言葉を失ってしまう。
 彼女たちにくるりと背を向けたマリアは、ぐ、と奥歯を噛み締めた。

 ——これくらい平気。悪態を()かれることには慣れているもの。



「……あの子、本当に下女なの?」
「知らないわよ。居酒屋であの子の荷造りを手伝ったゼナから聞いただけなんだから」

 マリアの背中を唖然と見送ったメイドたちがこそこそと呟き、持ち場に戻ろうとした時だ。

「あなたがた。皇太子殿下のお茶役であるマリア様に暴言を吐くなど、良い度胸ですわね?」

 怒りを含んだ鋭利な声が、二人のメイドの背中を刺す。
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