【コミカライズ連載中】➕SS 雲隠れ王女は冷酷皇太子の腕の中〜あなたに溺愛されても困ります!

「ラムダ……っ?!」

「すべからくご存知かとは思いますが。皇族方のお茶役というものは、ご側室やお妾様の将来をも見込まれる大切な御方。暴言を吐いて甚振(いたぶ)るなど重罪に値します。
 それにマリア様に接する事を許されているのはこのわたくしだけです。首を刎ねられたくなけれは、もう二度とマリア様にはお近づきになりませんように。
 今回だけは、あなたがた二人のお名前はわたくしの心の中に(とど)めておきます。ですが次に同じことがあれば、即座にフェリクス公爵様にお知らせ致します。他の方々にも、その様に伝えてくださいませ」

 弾かれたようにみるみる顔色を悪くするメイドたち。重い空気を肩で破ってきびすを返し、ラムダは颯爽と場を離れた。

 

 マリアの部屋の扉を叩けば、はい! と、明るい声が応える。
 ラムダは安堵の吐息を漏らす。心無い暴言を浴びせられたが、落ち込んでいる様子ではなさそうだ。

「おはようございます、マリア様。ラムダでございます」

 扉を開けて部屋に入れば、薄灰色の仔猫を抱いたマリアの溢れんばかりの笑顔に驚かされた。
 かがやく朝陽が差し込む部屋の中、嬉々として頬を綻ばせるマリアは光の妖精を(まと)うようだ。

 ——本当に。
 昨日、初めてお目にかかった時を思えば、湯浴みとお着替えだけで見違えられましたわ。

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